ルソン海峡

ルソン海峡は、南シナ海とフィリピン海（太平洋）を結ぶ、非常に重要な海路です。この海峡は、台湾とフィリピンのルソン島との間に位置しており、その幅は約250kmに及びます。海峡内には二つの主要な群島が存在します。北から順に、バタネス州に属するバタン諸島（バシー諸島）と、カガヤン州に属するバブヤン諸島です。これらの島々によって、ルソン海峡は、バシー海峡、バリンタン海峡、バブヤン海峡という三つの海峡に区分されます。

バシー海峡: バタン諸島と台湾の間に位置する海峡です。
バリンタン海峡: バタン諸島とバブヤン諸島との間にある海峡です。
バブヤン海峡: バブヤン諸島とルソン島の間に位置する海峡です。

ルソン海峡は、その地理的な位置から、歴史的にも戦略的に重要な役割を果たしてきました。特に第二次世界大戦（太平洋戦争）中には、この海峡が重要な戦場となりました。

太平洋戦争におけるルソン海峡

1941年12月、日本軍はフィリピン侵攻の際、ルソン海峡を重要なルートとして利用しました。12月8日には、真珠湾攻撃とほぼ同時期に、日本軍部隊がバタン諸島に上陸を開始しました。この上陸作戦は、日本軍によるフィリピン侵攻の初期段階において、重要な一歩となりました。また、12月10日には、バブヤン諸島のカミギン島も占領され、航空基地の設置が計画されましたが、これは実現しませんでした。さらに同じ12月10日には、別の部隊がルソン島のアパリに上陸しました。

ルソン海峡は、太平洋戦争中、日本の南方資源地帯と本土を結ぶ重要な輸送路でした。特に石油輸送船団（ヒ船団、ミ船団など）や、フィリピンへの増援部隊を輸送する船団が頻繁に航行していました。そのため、アメリカ海軍はルソン海峡を「コンボイ・カレッジ（Convoy College）」、つまり「船団大学」と呼び、潜水艦部隊にとって絶好の作戦場所と見なしました。戦争末期には、アメリカ海軍の潜水艦が多数配備され、この海峡で多くの日本輸送船が撃沈されました。この結果、日本の海上輸送は大きな打撃を受け、戦局に大きな影響を与えました。

ルソン海峡は、その地理的な特性から、太平洋戦争において戦略的に重要な場所となり、海戦史において特筆すべき舞台となりました。この海峡の攻防は、戦争の行方を左右する一因ともなったと言えるでしょう。

参考文献
サミュエル・E・モリソン 『モリソンの太平洋海戦史』 光人社、2003年。

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