ティノス島

ティノス島：エーゲ海の聖地と芸術の島

ティノス島は、エーゲ海北部のキクラデス諸島に位置する、ギリシャ領の美しい島です。その魅力は、宗教的な聖地としての側面と、豊かな芸術文化、そして変化に富んだ自然景観の三拍子から成り立っています。

聖母マリアの聖堂と巡礼

ティノス島で最も有名なのは、ギリシャ正教会のパナギア・エヴァンゲリストリア聖堂です。この聖堂は、生神女マリア（聖母マリア）を祀っており、聖母マリアのイコンは奇跡を起こす力があると信じられています。そのため、毎年8月15日の生神女就寝祭には、世界中から多くの巡礼者が訪れ、島は信仰の熱気に包まれます。巡礼者たちは、港から聖堂までの800mの道のりを、膝と手で進んで祈りを捧げる様子は、信仰の深さを物語っています。この巡礼は、東地中海地域でも最大規模かつ活発に行われているもののひとつです。

多様な自然と歴史

ティノス島の自然は多様です。北海岸のパノルモスやコリンビトラ、南海岸のキオニア、アイオス・イアンニス・オ・ポルトス、アイオス・ソスティスなど、多くの美しいビーチが点在しています。一方、島の最高峰であるツィクニアス山（750m）や、独特のギザギザとした峰を持つエクソンヴルゴ山など、変化に富んだ地形も見られます。ツィクニアス山とエクソンヴルゴ山の間には、ファラタドスの肥沃な平地が広がり、島では珍しい平坦な地形となっています。ヴォラクス周辺では、巨大な玉石が織りなす独特の景観が見られ、ピルゴス周辺の山岳地帯では、美しい緑の大理石を採掘することができます。

ティノス島の歴史は古く、1207年から1715年にかけてはヴェネツィア共和国の支配下、その後はオスマン帝国の支配下に入りました。ギリシャ独立戦争後にギリシャ領となり、第二次世界大戦中、1940年にはギリシャ海軍の巡洋艦エリがイタリア潜水艦によってティノス港で撃沈されるという出来事もありました。

石造りの文化と芸術

ティノス島は、大理石、緑色蛇紋岩、石綿、花崗岩など、豊富な鉱物資源に恵まれています。そのため、島民たちは古くから石材を巧みに利用し、石造りの家々や石垣、石畳の道などが島全体に広がっています。丘陵地帯には、石垣が雛段状に築かれ、集落は石の擁壁で守られた道で結ばれています。このような石造りの文化は、ティノス島の独特の景観を形成する重要な要素となっています。

また、ティノス島は、多くの彫刻家や画家を輩出したことでも知られています。有名な出身者には、オスマン帝国の有力者であったキョセム・スルタン、画家であるニコラオス・ギジスやニキフォロス・リトラスなどがいます。

交通と行政

ティノス島には、旅客用の高速ボート港とフェリー・高速船用の港が3つあります。ミコノス島、ピレウス、ラフィナ、アンドロス島、シロス島などへの船便が出ています。また、ティノスの街から約2kmの場所にヘリポートがあります。かつては空港建設計画もありましたが、地元住民の反対により頓挫しています。島内はバス路線で結ばれています。

ティノス島は、ティノス県ティノス市に属し、2011年のカリクラティス改革により、旧ティノス市、エクソンヴルゴ市、パノルモス村が合併して現在のティノス市となりました。

文化・観光

ティノス島には、パナギア・エヴァンゲリストリア聖堂以外にも、80以上の風車、1000ほどのハト小屋、50もの村、エクソブルゴ山に築かれたヴェネツィア時代の城塞など、多くの見どころがあります。これらの歴史的建造物や自然景観は、ティノス島の魅力をさらに深めています。宗教的な聖地としての側面と、豊かな芸術文化、そして変化に富んだ自然景観を兼ね備えたティノス島は、訪れる人々に忘れられない思い出を残してくれることでしょう。

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