ティレル・P34

ティレルP34

ティレルP34（Tyrrell P34）は、フォーミュラ1史上初の6輪車として1976年と1977年のF1世界選手権に参戦した名車です。このマシンは、デレック・ガードナーによって設計され、ティレルチームが開発しました。1976年の第4戦から1977年の最終戦にかけて実際にレースに投入され、多くの注目を集めました。

開発経緯

プロジェクトは1974年8月に始まり、1975年の8月に設計図が完成しました。プロトタイプが製造され、9月22日にプレス発表が行われた際、6輪車の存在は記者たちを驚かせました。デレック・ガードナーは、スクーデリア・フェラーリなどの強豪と戦うために空気抵抗の削減を狙い、小さな前輪を持つ4つのフロントタイヤという斬新なデザインを採用しました。

実戦デビューまでの道

ティレルの中では異端な名前の「PROJECT/34」で知られるこの車両は、従来のナンバリング方式から外れた命名となっています。デビュー前の試験走行で、デパイユが中心になり6輪の優位性が確認され、その後新たなシャシーが製作されました。最終的に1976年シーズンはティレルP34/2が主に使用されることとなります。

1976年シーズン

シーズン開始時にあたる第4戦スペインGPでは、デパイユがP34で予選3位に入り、決勝でも3位を走行するなど好スタートを切ります。続くレースでもシェクターとデパイユが活躍し、モナコGPでは2・3位フィニッシュ、スウェーデンGPではシェクターがポールポジションを獲得し、優勝を果たすなど組織力の高さを証明しました。

しかし、マシンの設計には課題も多く、シェクターはP34について「とてもコントロールしやすいが、フロントサスペンションの剛性不足が問題」と語っています。特にブレーキング時の挙動が気になるものとなっていました。それでもチームは様々な改良を施しながら競技に挑み、最終的には良好な成績を収め、1977年シーズンへとつながります。

1977年シーズン

1977年シーズンは新しいシャシーP34/5を投入し、ピーターソンを新たに迎えてシーズンが始まりました。開発された新しいカウルによる期待された性能向上は、なかなか実現しませんでした。デパイユを除いたドライバーは6輪車の扱いに苦労し、表彰台に立つことは難しい状況が続きました。最終的に、シーズン中に多くの改良が施されましたが、他チームに追い抜かれ、戦績は低迷します。

技術的特長

P34は軽合金モノコック構造を採用し、前4輪、後2輪の設計によって独特な操作性を持つものでした。この車両は、フロントサスペンションは独立懸架、ブレーキはAPレーシング製のディスクブレーキが装備されています。また、エンジンはフォード・コスワースDFVを搭載し、技術的にも先進的でした。

顕著な影響

ティレルP34はその独自性から他のチームにも影響を与え、同様の6輪デザインを持った様々な実験車両が試みられました。しかし、1983年に実施された車両規定の改定により、6輪車はF1の世界から姿を消すことになりました。それにもかかわらず、ティレルP34のデザインと革新性は今なお多くの人々に語り継がれています。

現存する車両

現在も複数のP34が展示されており、ヒストリックレースにも出場しています。これにより、F1の歴史における独自の地位を確立し、多くのファンに愛され続けています。例えば、P34/2はドニントン・グランプリ・コレクションで保存されており、映画「ラッシュ」でも使用されました。

ティレルP34はその斬新な設計理念とレースでの活躍から、フォーミュラ1の歴史に名を刻み続けています。

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