テイク・ファイヴ

テイク・ファイヴ：ジャズ史に輝く異色の名曲

「テイク・ファイヴ」は、ポール・デスモンドが作曲し、デイヴ・ブルーベック・カルテットが1959年に発表したアルバム『タイム・アウト』に収録されたジャズの楽曲です。この曲の最大の特徴は、そのタイトルにもあるように、ジャズでは非常に珍しい5/4拍子を採用している点にあります。

誕生の背景

1959年6月から8月にかけて、ニューヨークのコロムビア30丁目スタジオで録音されたこの曲は、デイヴ・ブルーベック・カルテットの代表作となりました。アルトサックスの印象的なメロディーと、創造性あふれるドラムソロが聴く人を魅了します。1959年、ニューヨークのヴィレッジ・ゲイトナイトクラブでのライブ演奏で初めて披露されました。

ブルーベックが5/4拍子を取り入れたきっかけは、米国務省主催のユーラシアツアーで訪れたトルコでの経験でした。ブルガリア音楽の影響を受けたストリートミュージシャンたちが、西洋音楽では珍しい9/8拍子の民謡を演奏しているのを目撃し、感銘を受けたのです。この経験から、ブルーベックは、ジャズの一般的な4/4拍子にとらわれず、よりエキゾチックなリズムを取り入れた実験的なアルバム制作を試みました。

ジャズの新たな可能性を切り開く

「テイク・ファイヴ」は、5拍子を使用した最初のジャズ曲ではありませんでしたが、アメリカで初めて商業的な成功を収めた楽曲の一つです。1961年には、Billboard Hot 100で25位、イージーリスニングチャートでも25位を記録しました。

その後も、デイヴ・ブルーベック・カルテットによって何度も再録音、ライブ演奏され、数多くのミュージシャンによってカバーされています。カーメン・マクレエは、デイヴ・ブルーベック夫妻が作詞したバージョンを1961年に録音しました。アル・ジャロウは1976年にドイツでスキャットバージョンを披露しています。

幅広いメディアでの起用

「テイク・ファイヴ」は、テレビ番組やラジオ、映画など、様々なメディアで使用されています。1960年代初頭には、NBCの番組「Today」のテーマ曲として使用され、番組内で何度も耳にすることができました。

1987年には、日本の武田薬品工業（現・アリナミン製薬）の栄養ドリンク「アリナミンV-DRINK」のCM曲として使用され、日本で再び注目を集めました。このCMでは、ニューヨークを舞台に、「GOOD CONDITION アリナミンＶ (新発売)」というキャッチコピーが使用されました。

著作権と慈善活動

作曲者であるポール・デスモンドは、1977年に亡くなる際、「テイク・ファイヴ」を含む楽曲の著作権をアメリカ赤十字社に寄贈しました。これにより、赤十字社は毎年多額のロイヤリティ収入を得ています。

演奏者

デイヴ・ブルーベック - ピアノ
ポール・デスモンド - アルトサックス
ユージン・ライト - ベース
ジョー・モレロ - ドラム

その他

ポール・デスモンドは、1963年に自身のリーダー作としてアンサーソング「テイク・テン」を発表しています。また、日本のフィギュアスケート選手、村主章枝と小塚崇彦がそれぞれ2007/2008シーズン、2008/2009シーズンのショートプログラムで使用しました。

主なカバーアーティスト

数多くのアーティストが「テイク・ファイヴ」をカバーしています。以下はその一部です。

チェット・アトキンス
アル・ジャロウ
ジョージ・ベンソン
クインシー・ジョーンズ
松本孝弘
グローヴァー・ワシントン・ジュニア
ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ
女子十二楽坊
* スティーヴィー・ワンダー

「テイク・ファイヴ」は、その斬新なリズムと美しいメロディーで、ジャズの可能性を広げただけでなく、多くの人々に愛される普遍的な名曲として、これからも長く聴き継がれていくことでしょう。

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