テオドシウス朝

テオドシウス朝：ローマ帝国を揺るがした王朝

テオドシウス朝は、4世紀末から5世紀中頃にかけて、ローマ帝国を支配した王朝です。379年にテオドシウス1世が東方正帝として即位したことから始まり、457年までその影響力を及ぼしました。この王朝は、ローマ帝国の後期における重要な転換期を象徴しており、帝国の東西分裂や、その後の衰亡へと繋がる出来事の数々を経験しました。

テオドシウス1世と帝国の統一

テオドシウス1世は、西方正帝グラティアヌスによって共同皇帝として迎えられました。しかし、グラティアヌスの死後、テオドシウス1世は次第に西方正帝をその影響下に置き、ローマ帝国の実質的な支配者となりました。彼の治世は、帝国の統一とキリスト教の確立によって特徴付けられます。テオドシウス1世は、キリスト教を国教に定め、異教徒の弾圧を行いました。この政策は、帝国の宗教的統一に貢献する一方、社会的な混乱も招きました。

帝国の東西分裂

395年、テオドシウス1世の死によって、ローマ帝国は東西に分裂しました。彼の息子、アルカディウスが東方帝、ホノリウスが西方帝として即位したのです。それ以前にも、帝国は実質的に東西に分かれて統治されていましたが、この分割は東西宮廷の対立を深刻化させ、最終的にローマ帝国の東西分裂という歴史的転換点となりました。日本では、この395年の分割をローマ帝国の東西分裂の始まりとする見方が一般的です。東ローマ帝国（ビザンツ帝国）は、その後も長く続きましたが、西ローマ帝国は5世紀中に滅亡しました。

東西両帝の系譜

東方帝

テオドシウス1世 (379年-395年): テオドシウス朝の創始者。帝国の統一とキリスト教の国教化を推進しました。
アルカディウス (395年-408年): テオドシウス1世の子。比較的弱気な皇帝とされ、宮廷内部の権力闘争に翻弄されました。
テオドシウス2世 (408年-450年): アルカディウスの子。比較的長期の治世を行い、帝国の防衛に尽力しましたが、フン族の脅威には抗しきれませんでした。
マルキアヌス (450年-457年): テオドシウス2世の妻プルケリアの夫。テオドシウス2世の死後、皇帝に即位しました。

西方帝

ホノリウス (395年-423年): テオドシウス1世の子。西方帝国の皇帝として、蛮族の侵入に苦しみました。
コンスタンティウス3世 (421年): ホノリウスの共同皇帝として短期間在位しました。
ウァレンティニアヌス3世 (424年-455年): ホノリウスの死後、西方帝国の皇帝となりました。権力闘争や蛮族の侵入に悩まされ、暗殺によってその生涯を終えました。

文化とその後

テオドシウス朝は、ローマ帝国後期における政治的・宗教的転換期を象徴する王朝です。キリスト教の隆盛、帝国の東西分裂、そして蛮族の圧力など、様々な要因が複雑に絡み合い、ローマ帝国の運命を大きく変えました。その後の東ローマ帝国は、ビザンツ帝国として独自の文化を築き上げ、西ローマ帝国の滅亡後も長く繁栄を続けました。テオドシウス朝の歴史は、ローマ帝国の栄光と衰退を理解する上で、欠かせない重要な一章と言えるでしょう。

参考文献

後藤篤子「テオドシウス朝」『世界大百科事典 第19巻』（平凡社、2007年改訂新版）

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