テティス (衛星)

土星の衛星テティス

テティスは、土星の第3衛星で、1684年にジョヴァンニ・カッシーニによって発見されました。土星の衛星の中では5番目に大きく、氷を主成分とする天体です。

概要

テティスは、太陽系内の主要な衛星の中でも特に密度が低い天体です。主成分は氷であり、少量の岩石が含まれていると考えられています。最近の研究では、テティスの表面が非常に明るいのは、同じ土星の衛星であるエンケラドゥスから噴出された氷の粒子が降り積もったためではないかという説が提唱されています。

テティスの進行方向側の半球の赤道付近には、両極よりも温度が低い領域が見られます。これは、テティスの公転に伴って高エネルギーの電子が衝突し続け、地表の氷が変化したためだと考えられています。また、テティスのラグランジュ点には、トロヤ衛星であるテレストとカリプソが存在します。

発見と命名

テティスは、1684年にジョヴァンニ・カッシーニによって発見されました。カッシーニは、以前にもレアとイアペトゥスを発見しています。これらの衛星は、カッシーニがパリ天文台に設置した大型望遠鏡で観測されました。

カッシーニは、発見した4つの衛星を「ルイの星」という意味の「Sidera Lodoicea」と名付けました。その後、17世紀末には、これらの衛星は番号で呼ばれるようになり、1789年にミマスとエンケラドゥスが発見された際には、番号が振り直されました。現在知られている名前を与えたのは、天文学者のジョン・ハーシェルで、テティスはギリシア神話の巨人族の1人であるテーテュースに因んで名付けられました。

軌道

テティスは、土星から約295,000km離れた場所を公転しています。軌道離心率は非常に小さく、軌道傾斜角も約1°です。テティスは、ミマスとの軌道傾斜角の共鳴に固定されていますが、両者の質量が小さいため、この共鳴は軌道離心率や潮汐加熱には大きな影響を与えていません。

テティスの軌道は、土星の磁気圏の内部に位置するため、土星とほぼ同じ速度で回転する磁気圏内のプラズマが衛星の後行半球に衝突しています。また、テティスは高エネルギー粒子の継続的な衝突にもさらされています。

物理的特徴

テティスの半径は約531kmで、太陽系の衛星の中では16番目の大きさです。質量は6.17×10^20kgで、密度は0.98g/cm3と低く、大部分が水氷でできていると考えられています。内部が岩石の核と氷のマントルに分化しているかどうかは分かっていません。

テティスの表面は、太陽系内で最も反射率が高いものの1つです。これは、エンケラドゥスから噴出された氷の粒子が降り積もったためだと考えられています。また、テティスの表面は、公転方向の半球と逆側の半球で明るさが異なり、後行半球は暗く赤っぽい色をしています。

テティスの表面には、氷の結晶以外の化合物はほとんど検出されていませんが、有機物やアンモニア、二酸化炭素が存在する可能性も指摘されています。

表面の特徴

色パターン

テティスの表面には、色や明るさの違いによって識別できる特徴があります。後行半球は暗く赤っぽく、先行半球はわずかに赤っぽくなっています。この色の違いは、土星の衛星では典型的なもので、E環からの明るい氷粒子や外側の衛星から来た暗い粒子が降り積もったことなどが原因として考えられています。

また、テティスの先行半球には、赤道から南北20°にかけて暗く青っぽい帯状の領域が見られます。この帯は、土星の磁気圏内の高エネルギー電子によって作られたと考えられています。

地形

テティスの表面には、多くのクレーターが見られます。中でも、直径450kmの巨大なクレーター「オデュッセウス」は、衛星全体の40%を占めるほどの大きさです。また、長さ2,000km以上にも及ぶ巨大な峡谷「イタカ谷」も存在します。

イタカ谷は、テティスの地下にあった液体が凍結する際に形成されたと考えられています。また、オデュッセウスを形成した天体衝突の衝撃波によって形成された可能性も指摘されていますが、クレーター年代学の調査からは、イタカ谷の方が古い地形であることが示されています。

クレーター年代学

テティスの表面のクレーター密度を調べることで、その表面の年代を知ることができます。クレーターが多い領域ほど古く、太陽系形成の頃まで遡ると考えられています。一方、オデュッセウス内部の最も新しい表面の年齢は、37億6000万年から10億6000万年と推定されています。

起源と進化

テティスは、土星の周りに存在した降着円盤の中で形成されたと考えられています。この円盤は、土星形成直後に、ガスとチリから形成されたものです。

テティスが非常に多くの水氷を含んでいる理由はまだ解明されていませんが、土星周囲の周惑星円盤の環境では、窒素分子と一酸化炭素がアンモニアとメタンに変換されることで、水氷が生成されると考えられています。また、かつてタイタンのような衛星が土星に飲み込まれる前に氷の地殻が引き剥がされ、それが集積して土星の環や内部衛星群が形成されたという説も提唱されています。

降着過程が終わった後、テティスの内部は冷えていき、その際に表面にひび割れが生じたと考えられています。

テティスは岩石成分が少ないため、放射性元素の崩壊による加熱は内部の進化に大きな影響を及ぼさなかったと考えられています。そのため、内部の潮汐加熱を除けば、テティスは内部溶融を経験していないと考えられています。

まとめ

テティスは、土星の衛星の中でも特に興味深い天体の一つです。氷を主成分とする表面や、巨大なクレーターや峡谷などの特徴的な地形は、テティスの進化の過程を物語っています。今後の探査によって、テティスの謎がさらに解き明かされることが期待されます。

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