周惑星円盤

周惑星円盤とは

周惑星円盤（circumplanetary disk）とは、惑星の周囲に形成される、ガス、塵、微惑星などの物質からなる円盤状の構造のことです。降着円盤の一種であり、惑星の周りを公転する衛星（太陽系外衛星や孫衛星を含む）が形成される場所と考えられています。木星のガリレオ衛星のように、巨大惑星の周りを公転する規則衛星は、惑星の自転方向と同じ方向に公転し、軌道平面もほぼ揃っています。これは、惑星が原始惑星系円盤の中で形成されるのと同様に、周惑星円盤の中で衛星が形成されることを示唆しています。

周惑星円盤の形成

惑星は、原始星の周囲に存在する原始惑星系円盤の中で、固体物質が集積して形成されます。同様に、巨大惑星の周囲にも、かつてはガスと塵からなる周惑星円盤が存在し、そこで固体物質が集積することで衛星が形成されたと考えられています。周惑星円盤は、原始惑星系円盤から供給された物質が、惑星に降着する際に形成されると考えられています。数値シミュレーションでは、巨大ガス惑星が周囲のガスを降着して質量を獲得する過程で、必然的に周惑星円盤が形成されることが示されています。

原始惑星系円盤の中では、固体物質は微惑星と呼ばれる小天体に成長し、それが惑星の材料となります。周惑星円盤内では、これと同様に「微衛星」(satellitesimal) が衛星の材料となると考えられています。

周惑星円盤の観測

原始惑星系円盤は比較的早くから観測されていましたが、周惑星円盤はサイズが小さく、観測が困難でした。しかし、近年では観測技術の進歩により、いくつかの若い太陽系外惑星の周囲で周惑星円盤の検出が報告されています。

2018年8月には、カメレオン座CS星bの周囲の周惑星円盤が検出されました。この星系は、星周円盤とともに周惑星円盤が存在している可能性が高いと考えられています。

2019年6月には、PDS 70bの周りに周惑星円盤の兆候が検出されました。分光観測と惑星への物質の降着の特徴から、その存在が示唆されました。

さらに2019年7月には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) を用いて、初めて周惑星円盤の直接的な検出が報告されました。ALMAは、ミリ波とサブミリ波の波長で観測することで、惑星間空間に存在する塵を捉えることができます。これは、これらの波長では恒星からの放射が弱く、可視光線では恒星の光が強すぎるため、惑星間空間の物質を観測しにくいからです。

PDS 70は、複数の巨大惑星を持つ若い恒星であり、PDS 70bは重い木星型の系外惑星です。2番目の惑星であるPDS 70cも同様に、若い木星型惑星であり、周惑星円盤の検出が報告されています。PDS 70cの場合、円盤の直径は約1天文単位で、月程度の大きさの衛星が3個形成されるほどの質量を持つとされています。

研究の進展と今後の展望

ライス大学のAndrea Isella氏は、PDS 70系の観測結果を「周惑星円盤の動かぬ証拠」と述べ、ALMAによる高分解能観測と赤外線・可視光線での撮像観測を組み合わせることで、惑星の周囲に存在する塵の集まりが、実際に惑星を取り囲む円盤であることを明確にできるだろうとの見解を示しています。

このように、周惑星円盤の観測は、衛星形成のメカニズムを理解する上で重要な手がかりとなります。今後の観測技術のさらなる発展により、周惑星円盤に関する研究はますます進展していくと期待されます。



関連項目
降着円盤
環 (天体)
太陽系外惑星
原始惑星系円盤
太陽系の形成と進化

外部リンク
Image Gallery of Dust disks (from Paul Kalas, "Circumstellar Disk Learning Site")

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