七十門徒

七十門徒とは

七十門徒（しちじゅうもんと）とは、新約聖書に記されているイエス・キリストの弟子たちのことで、ルカによる福音書10章1節にその記述が見られます。イエスは十二使徒とは別に、70人の弟子を選抜し、二人一組で伝道に送り出しました。正教会では、この70人の弟子たちを使徒として捉えており、七十徒とも表記されます。

七十門徒の選出と役割

イエスは、自らの教えを広めるために、十二使徒に加え、さらに多くの弟子たちを必要としました。そのために選ばれたのが七十門徒であり、彼らはイエスの宣教活動を補佐する役割を担いました。彼らは、イエスが訪れる予定の各地を先に巡り、人々にイエスの到来を告げ、福音を伝える使命を与えられました。

七十門徒の人名について

新約聖書には、七十門徒全員の名前が具体的に記されているわけではありません。そのため、誰が七十門徒であったかについては、様々な伝承が教会内に存在します。古代の教会史家エウセビオスも、十二使徒の名前は福音書に明記されている一方で、七十門徒の名簿は伝わっていないと述べています。

初期のリストと課題

七十門徒の最初の名簿とされるのは、4世紀のティルスの主教ドロセオスによるものです。しかし、このリストには実在が疑わしい人物も含まれており、後世の創作であると考えられています。そのため、正教会内でも、この初期のリストには誤りがあると認識されてきました。

聖ディミトリイによる修正

17世紀、ロストフの府主教であった聖ディミトリイが、初期のリストを修正し、より正確な七十門徒の名簿を作成しました。彼は、誤った伝承を訂正し、ほぼ完全なリストを作成したとされています。このリストは、正教会で広く用いられており、七十門徒の人名を知る上で重要な資料となっています。

西方教会との相違

正教会が用いている七十門徒の名簿に対して、西方教会（カトリック教会やプロテスタント）では異論や異説が存在します。しかしながら、正教会では聖ディミトリイが作成した名簿が、七十門徒の人名リストとして広く用いられています。

七十門徒に含まれる著名な聖人たち

七十門徒の中には、特に著名な聖人も含まれています。以下にその一部を紹介します。

主の兄弟イアコフ (ヤコブ)：イエスの兄弟であり、エルサレム教会の指導者として活躍しました。
福音記者マルコ：マルコによる福音書の著者とされています。
福音記者ルカ：ルカによる福音書と使徒言行録の著者であり、医師でもありました。
アリマフェヤのイオシフ (アリマタヤのヨセフ)：イエスの遺体を埋葬した人物として知られています。
初致命者首輔祭聖ステファン (ステファノ)：キリスト教最初の殉教者として知られています。
ティモフェイ (テモテ)：パウロの弟子であり、重要な教会の指導者でした。
ティト (テトス)：パウロの協力者として知られています。
輔祭フィリップ (フィリポ)：使徒言行録に登場する宣教者です。
ワルナワ (バルナバ)：パウロの協力者であり、使徒としても知られています。
スタヒイ (スタキス)：使徒パウロがローマ人への手紙で言及している人物です。
リン (リヌス)：ローマ教会の初代の教皇の一人とされています。
ニカノル: 使徒言行録に登場する七人の奉仕者の一人です。

これらの人物は、キリスト教の歴史において重要な役割を果たし、今日でも多くの信者に尊敬されています。

まとめ

七十門徒は、イエスの宣教活動を支え、キリスト教の普及に大きく貢献しました。彼らの名前は必ずしも全てが明確ではありませんが、正教会における伝承や記録を通じて、その存在が確認されています。七十門徒の物語は、キリスト教信仰の歴史と多様性を理解する上で、重要な要素となっています。

参考文献

武岡武夫編『七十徒小伝』名古屋ハリストス正教会、1987年4月19日再刊

関連項目

亜使徒

外部リンク

* 聖使徒福音記者ルカのイコン

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