テモテ

テモテは、新約聖書の『使徒行伝』に登場する重要な人物です。彼はリュストラ（現在のトルコ南部）出身の初期キリスト教徒で、使徒パウロの忠実な協力者であり、弟子でした。ギリシア語ではティモテオスと呼ばれ、東方諸教会、正教会、カトリック教会、聖公会、ルーテル教会で聖人として崇敬されています。また、伝承によれば、殉教者（致命者）としても知られています。

正教会では、1月22日（ユリウス暦を使用する教会では2月4日に相当）が彼の記憶日です。使徒の称号を持ち、七十門徒の一人に数えられることから、「聖使徒ティモフェイ」とも呼ばれています。

『使徒行伝』によれば、テモテの父親はギリシア人で、母親はユダヤ人でした。パウロはテモテの信仰心と才能を見抜き、自身の宣教旅行に同行させたいと考えました。しかし、ユダヤ人社会への配慮から、テモテに割礼を受けさせました。これは西暦50年頃の出来事と推測されています。

テモテはパウロの第二回、第三回宣教旅行に同行し、パウロの宣教活動を献身的に支えました。彼はパウロの良き協力者として、マケドニアなどパウロがすでに宣教活動を行った地域に派遣され、教会の指導にあたりました。

『コリントの信徒への手紙二』には、テモテがパウロの信頼厚い協力者であったことが記されています。パウロはテモテをコリントスの教会に派遣し、その指導を委ねようとしていました。また、『フィリピ人への手紙』では、テモテはパウロと共に書簡の差出人として名前を連ねています。テサロニケの信徒への手紙二の著者であるとする説もあります。

後の伝承によると、65年にパウロはテモテを按手し、エフェソスの主教（司教）に任命しました。テモテは15年間主教としてエフェソスの教会を指導したとされています（ただし、別の伝承ではテモテは90年または93年に亡くなったとされています）。エフェソスの多神教徒はテモテに自分たちの神々を礼拝させようとしましたが、彼はそれを拒否し、多神教徒に福音を説きました。これに激怒した多神教徒は、テモテを街路に引きずり出し、石を投げて殺害したと伝えられています。

新約聖書には、『テモテへの手紙一』と『テモテへの手紙二』という書簡が収録されています。これらの手紙は、パウロがテモテに宛てて書いたものとされています。しかし、現代の自由主義神学や高等批評の研究では、これらの手紙はパウロの死後、別の著者によって書かれた可能性も指摘されていますが、確証は得られていません。

聖書信仰を重視する福音派では、聖書の自己証言に基づき、パウロ自身がテモテへの手紙を書いたと信じられています。

関連情報として、『テモテへの手紙一』、『テモテへの手紙二』、『テトス』といった聖書の書簡も参照してください。

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