テトラヒドロチオフェンとは
テトラヒドロチオフェン(Tetrahydrothiophene)は、4つの炭素
原子と1つの硫黄
原子から成る5員環の飽和複素環式化合物です。これは、チオフェンが水素化反応を受けて飽和状態になったものと考えられています。この化合物は、無色透明で揮発性のある液体であり、非常に強い不快な臭いを持っています。日本の
消防法では、第4類危険物の第1石油類に分類されており、その取り扱いには注意が必要です。海外では一般的に「THT」と呼ばれることが多いです。
用途
テトラヒドロチオフェンは、その特有の不快臭を利用して、主に
天然ガスに付臭剤として使われることがあります。これは、エタンチオールの代用品としての役割を果たし、ガス漏れの早期発見を促進することが期待されています。さらに、
殺虫剤や防虫剤の溶媒としても用いられています。また、この化合物はスルホランの中間生成物としても知られており、リチウム電池の電解液としても利用されています。
この臭気物質は、エタンチオールと比べていくつかの利点があります。ガス管や弁に対する腐食性が少なく、
嗅覚の習慣的非活性化を引き起こすこともなく、喉や目に対する刺激や頭痛を引き起こすこともありません。しかし、北見市での都市ガス漏れ事故を受けて、テトラヒドロチオフェンが土壌に吸着する問題が明らかになったことがあり、この吸着がガス漏れの早期検知を妨げる一因とされています。
また、都市ガスの硫黄分が高いことから、家庭用燃料電池であるエネファームを使用した場合、触媒が早期に劣化するという問題も存在します。このため、都市ガス業界では硫黄分が少ない付臭剤への変更が進められています。これにより、長らくテトラヒドロチオフェンを利用していた都市ガス事業者でも、tert-ブチルメルカプタンや硫黄を含まないシクロヘキセンといった混合物へとシフトしています。
まとめ
テトラヒドロチオフェンは、さまざまな用途に利用される化合物であるにも関わらず、その使用には注意が必要です。利用の幅広さに対して、環境や健康に関する懸念も存在します。そのため、今後の研究や規制によって、より安全に使用するための条件が整備されていくことが期待されています。