付臭

付臭（ふしゅう）

付臭とは、都市ガスや液化石油ガスに薬剤を混ぜて嗅覚でガスの漏れを察知できるようにする技術を指します。この技術は一般に着臭とも呼ばれます。天然ガスや液化石油ガスは、その主成分であるメタンやエタン、プロパンなどが無臭であるため、急な漏洩時には非常に危険です。特に1937年にアメリカで発生したニューロンドン学校爆発事故は、無臭ガスの漏洩が引き金となりました。この事例を受けて、ガス漏れをすぐに感知できるように無臭のガスに意図的に臭いを付けることが世界中で広がりました。

日本においては、ガス工作物の技術基準により、ガスが空気中で1,000分の1以上の濃度に達した場合、臭気が感じられるように定められています。したがって、ガス漏れのリスクを減少させるためには、付臭が必要不可欠な方法とされています。

付臭に使用される薬剤

付臭に使用される薬剤は一般に、付臭剤（都市ガス）または着臭剤（プロパンガス）と呼ばれ、以下の条件を満たす材料が選ばれます:

1. 人体に有害でないこと
2. 嗅覚に対して疲労を引き起こしにくく、低濃度でも感知可能であること
3. 一般的に存在する匂いとははっきりと識別できること
4. ガス器具や導管に影響を与えず、安定した化学的性質を持つこと
5. 燃焼に影響を与えず、残留臭気がないこと
6. 経済的かつ取り扱いやすいこと
7. 嗅覚以外の方法でも検出可能であること

これらの付臭剤は、消防法に基づく危険物として取り扱われ、運搬には一定の基準を満たしたタンクを使用しなければなりません。

燃料用の付臭剤

都市ガスやプロパンガスでよく使われる付臭剤には、例えば次のような有機硫黄化合物が挙げられます:

• - tert-ブチルメルカプタン（TBM）: タマネギが腐った匂い
• - テトラヒドロチオフェン（THT）: 石炭ガスのような匂い
• - ジメチルサルファイド（DMS）: ニンニクのような匂い
• - エチルメルカプタン

科学技術の進展により、2021年を境に硫黄分を減らすためにシクロヘキセンが併用されるケースが増えてきました。

燃料電池用の付臭剤

燃料電池用に使用されるガスについては、上記の付臭剤を使用すると電極や触媒に悪影響を及ぼすため、脱硫処理が行われます。最近では硫黄を含まない付臭剤が開発され、特に燃料電池自動車などで注目されています。例えば、ジエチルスルフィドなどが研究されています。

工業用の付臭

一部の液化石油ガスは「工業用無臭」として供給され、付臭を行わないこともあります。

付臭の方法と設備

ガスへの付臭方法は主に3つあり、これらには特定の設備が必要です:
1. ポンプ式注入方式: 液体の付臭剤をガスに直接注入。
2. 蒸発式注入方式: 付臭剤を気化させ、その後ガスに注入。
3. 液付臭方式: 液化ガスに直接付臭剤を加える。

蒸発式は簡易型、ポンプ式は定量的に付臭を行う場合に使われます。環境保護の観点からも、新しい付臭剤への移行が求められており、付臭設備の更新や撤去時には地域の環境や住民への配慮が必要です。

関連項目

• - ニューロンドン学校爆発事故
• - 爆発物マーカー

付臭は私たちの生活の安全を守るために重要な技術であり、これからもその価値は高まるでしょう。

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