テトラブロモビスフェノールA

テトラブロモビスフェノールA（TBBPA）について

テトラブロモビスフェノールA（Tetrabromobisphenol A、略称TBBPA）は、臭素系の難燃剤の一種です。市販されているものは一般的に黄色ですが、純粋な形状は白色の固体です。TBBPAは最も普及した難燃剤の一つとして広く知られ、さまざまな産業で使用されています。

生産方法と用途

TBBPAはビスフェノールAを臭素化して製造され、その化学式は C15H16−xBrxO2（xは1から4の範囲）となっています。市販されているTBBPAの大半は、異なる臭素化度の混合物で構成されており、臭素化度が高いほど難燃性も向上します。2004年のデータによると、ヨーロッパでは年間に約6,200トンのTBBPAが消費されているとされています。

また、TBBPAは合成樹脂のモノマーとしても利用されます。具体的には、ビスフェノールAの一部をTBBPAに置き換えることで、難燃性を有するポリカーボネートが製造され、その中でも特にプリント基板用のエポキシ樹脂の製造において低グレードのTBBPAが使用されます。

毒性についての研究

欧州食品安全機関（EFSA）は、2011年12月にTBBPAおよびその誘導体が食品に与える影響に関する研究を発表しました。この研究では、344の魚介類を含む食品サンプルが調査され、結果として「EU内でのTBBPAへの食品の暴露は健康上の懸念を引き起こさない」との結論が出されています。また、幼児がハウスダストを通じてTBBPAにさらされた場合でも、健康への影響は低いとされています。

しかし、いくつかの研究ではTBBPAが内分泌攪乱物質や免疫毒性物質である可能性が指摘されています。特に、エストロゲンやアンドロゲンに干渉することがあり、甲状腺ホルモンに似た作用を持ち、体内での活性を妨げる可能性があります。さらに、T細胞の活性を抑えることが示唆されており、免疫応答への抑制効果が懸念されています。

2013年の文献レビューでは、TBBPAは「内分泌系への障害に関する悪影響」を引き起こさないとの見解が示されており、国際基準に従えばTBBPAを内分泌攪乱物質として考えるべきではないとされています。また、TBBPAは哺乳類の体内で急速に排泄されるため、蓄積される可能性は低いとされています。さらに、一般的な曝露のレベルは非常に低く、安全性に関する基準値も十分に下回ることが確認されています。

環境での影響と規制

環境中に放出されたTBBPAは、水質や土壌、底質においても極めて低濃度で検出されています。EUでは460件以上の関連研究を基に、8年間にわたるリスク評価が行われ、2008年にはその結果が公式に発表されました。TBBPAはREACH（化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則）にも登録されています。

さらに、2021年にはTBBPAに関する報告書が公開され、RoHS対策における意見も示されています。その中でTBBPAの添加用途は規制対象に含まれましたが、反応性用途の使用は含まれませんでした。

まとめ

テトラブロモビスフェノールA（TBBPA）は、難燃剤として広く使用されていますが、その健康への影響や環境への影響については慎重な評価が求められています。今後も研究が進むことで、その安全性や使用に関する理解が深まることが期待されます。

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