テトラメチルエチレンジアミン

テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) の概要

テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) は、エチレンジアミンをメチル化した構造を持つ有機化合物です。特徴的な魚臭を持つ無色の液体で、TMEDA、TEMED、TMED、TMEN などの略称で呼ばれています。塩基性（pKb 5.85）を示し、引火性が高いことから、消防法では危険物第4類第1石油類に分類されています。

有機金属化学における用途

TMEDA の最も重要な用途の一つは、有機金属化学における金属イオンのキレート配位子としての利用です。TMEDA は、二座配位子として金属イオンと強固な錯体を形成します。この性質を利用することで、通常は有機溶媒に溶解しにくい金属塩を可溶化し、反応を促進させることができます。

特に、リチウムイオンとの親和性が高く、n-ブチルリチウム (n-BuLi) の活性化に用いられます。n-BuLi は通常、6量体として存在しますが、TMEDA と錯体を形成することで、活性が高まり、より求核的な試薬となります。n-BuLi/TMEDA 錯体は、ベンゼン、フラン、チオフェン、N-アルキルピロール、フェロセンなどからプロトンを引き抜く強い塩基性を示し、場合によっては2個のプロトンを引き抜くことも可能です。

TMEDA は、さまざまな有機金属化合物の合成において、[Li(TMEDA)2]+ を対カチオンとする錯体の生成にも利用されます。この錯体において、[Li(TMEDA)2]+ は4級アンモニウムイオンと類似の働きをしますが、塩基に対する耐性はずっと高いという特徴があります。

その他の用途

TMEDA は、有機金属化学以外の分野でも利用されています。例えば、アクリルアミドの重合・ゲル化反応の開始剤として使用されます。アクリルアミドにTMEDA (0.1～0.2% v/v) とペルオキソ二硫酸アンモニウム (APS) を添加することで、ポリアクリルアミドゲルを生成することができます。ポリアクリルアミドゲルは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE) やウェスタンブロッティングといった生化学実験において、タンパク質などの生体分子の分離や検出に用いられる重要な担体です。

安全性

TMEDA は引火性が高く、皮膚や粘膜に対する刺激性も持ちます。取り扱いには注意が必要です。作業を行う際は、保護手袋、保護メガネなどを着用し、十分な換気を確保する必要があります。また、吸入や皮膚への接触を避け、万一吸入や接触した場合には、直ちに医師の診察を受けることが重要です。さらに、廃棄方法も適切に行う必要があります。

まとめ

テトラメチルエチレンジ[アミン]は、その特異的な性質から、有機金属化学、高分子化学など幅広い分野で重要な役割を果たす化合物です。しかしながら、引火性や刺激性といった危険性も併せ持つため、取り扱いには十分な注意が必要です。TMEDAの性質と用途を理解し、安全な実験操作を心がけることが重要です。

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