テナガエビ

テナガエビ：多様な生態と魅力的な姿

テナガエビは、熱帯から温帯の淡水域や汽水域に生息するエビの一種です。その名の通り、長く発達したハサミ脚が特徴的で、種類によって体長や形態、生息環境にバリエーションがあります。日本でも複数の種類が生息しており、地域によっては重要な漁業資源にもなっています。

テナガエビの形態と生態

テナガエビの体長は種類によって異なり、3cmほどの小型種から20cmを超える大型種まで存在します。成体は一般的に緑褐色から灰褐色ですが、若い個体は半透明の体で黒い縞模様が入っており、スジエビに似ています。しかし、目の後ろにある肝上棘（かんじょうきょく）の有無で区別が可能です。

最も顕著な特徴は、名前の由来にもなっている長く発達した第2歩脚（ハサミ脚）です。ザリガニやカニのような第1歩脚が大きいのではなく、第2歩脚が著しく発達しており、その内側にはさらに小さな第1鋏脚も確認できます。オスのハサミ脚は種類によっては体長よりも長く伸びる一方、メスや若い個体では細く短いです。このハサミ脚は餌を捕獲したり、縄張りを守るための闘争に用いられます。移動時は、ハサミ脚を前に突き出し、後ろの3対の歩脚で歩きます。

テナガエビは夜行性で、昼間は石の下や水草の茂みなどに隠れて生活しています。しかし、曇りの日など日照が少ない場合は、昼間でも活動している姿を観察できます。食性はほぼ肉食性で、水生昆虫や魚の死骸、イトミミズなどを捕食し、藻類を食べることもあります。飼育下では、動物性餌料が不足すると共食いすることも知られています。

繁殖期は5月から9月にかけてで、メスは一度に1000～2000個もの小さな卵を産み、腹肢で孵化するまで保護します。多くのテナガエビは両側回遊性で、幼生期を汽水域または海で過ごし、成長すると淡水域に戻って生活します。寿命は1～3年程度と推定されていますが、個体差や環境によって大きく変動します。オスの方が長生きする傾向があります。

テナガエビの分布と種類

テナガエビは熱帯から温帯にかけて広く分布していますが、熱帯地域の方が種類が多い傾向があります。日本においては、テナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビなどが代表的な種類です。地域によっては、これらの種類に加えてさらに多くのテナガエビ属の種が生息しています。

代表的な種類を以下に示します。

テナガエビ (Macrobrachium nipponense): 本州、四国、九州などに分布。オスのハサミ脚は非常に長く、体長の1.8倍に達することもあります。
ヒラテテナガエビ (Macrobrachium japonicum): 千葉県以南に分布。流れの速い上流域にも生息します。ハサミ脚が太くて平たいのが特徴です。
ミナミテナガエビ (Macrobrachium formosense): 千葉県以南に分布。九州や沖縄では「テナガエビ」といえばこの種を指すことが多いです。
ザラテテナガエビ (Macrobrachium australe): 種子島以南に分布。ハサミ脚の先端に小さな棘が密生しているのが特徴です。
ショキタテナガエビ (Macrobrachium shokitai): 沖縄県西表島固有種。完全な河川残留型で、幼生は海に下らずに淡水で成長します。絶滅危惧種に指定されています。
コンジンテナガエビ (Macrobrachium lar): 屋久島以南に分布。大型種で、オスのハサミ脚は30cmに達することもあります。
* オニテナガエビ (Macrobrachium rosenbergii): 東南アジア原産。大型種で養殖もされています。

テナガエビの利用

テナガエビは食用として漁獲され、地域によっては重要な漁業資源となっています。釣りで捕獲することも可能で、赤虫やミミズなどを餌に釣ることができます。塩ゆでや唐揚げなどで食べられますが、寄生虫がいる可能性があるため、生食は避けるべきです。

また、観賞用として飼育する人もいますが、肉食性のため、他の小魚やエビと一緒の飼育は難しいです。共食いや喧嘩をするため、単独飼育が推奨されます。

まとめ

テナガエビは、多様な種類と生態を持ち、地域社会においても重要な役割を担う魅力的な生き物です。その生態を理解し、適切に利用することで、この貴重な資源を未来へつないでいくことが重要です。

もう一度検索