テムデル

テムデル：元朝の権臣、その生涯と政治的影響

テムデル（生年不詳 - 1322年）は、元朝に仕えた政治家であり、皇太后ダギの寵愛を受け、国政を壟断したことで知られています。彼の出自は明らかではありませんが、チンギス・カンに仕えたスケケン氏族の末裔であるという説があります。

生い立ちと初期のキャリア

テムデルは、クビライの時代から元朝に仕え始めました。オルジェイトゥ・カアン（成宗テムル）の治世には、宮廷内の飲食を掌る宣徽院に勤務し、そこで後の皇太后ダギの寵愛を得たとされています。ダギの支持を得たテムデルは、急速に昇進を重ねていきました。

第一次丞相時代

クルク・カアン（武宗カイシャン）の死後、ダギとアユルバルワダ（後のブヤント・カアン）が実権を握ると、テムデルは中書右丞相に抜擢されました。ブヤント・カアンが上都に移ると、テムデルは大都の統治を任され、重要な役割を果たしました。しかし、その強引な手法は反発も招き、一時失脚する事態となりました。

第二次丞相時代と政敵の排除

テムデルは皇太后ダギの力添えもあり復職。再び中書右丞相となると、旧カイシャン派勢力の一掃を計画。コシラ（後のクシャラ・カアン）を皇太子の座から引きずり下ろし、ブヤント・カアンの実子シデバラを皇太子に据えるという陰謀を実行しました。この間、宣政院の長官も兼務し、チベット仏教を優遇する政策を推進しました。

失脚と復権、そして最期

コシラの逃亡により、テムデルの権勢は一時的に衰えましたが、ブヤント・カアンの死後、再び中書右丞相に返り咲きました。復帰後、テムデルはかつて自身を弾劾した者たちを処刑し、その横暴ぶりは人々を震え上がらせました。しかし、ゲゲーン・カアン（シデバラ）が即位すると、ダギとテムデルの影響力は低下し、1322年に相次いで亡くなりました。

死後の影響

テムデルの死後、ゲゲーン・カアンはテムデル派の粛清を行い、テムデルの官職を剥奪し、息子を処罰しました。しかし、この粛清は反発を招き、ゲゲーン・カアン暗殺計画へと繋がりました。暗殺計画にはテムデルの息子も加わっており、彼の死後も元朝の政局に影響を与え続けました。

テムデルは、元朝において皇太后の寵愛を背景に権勢を振るい、国政を壟断した人物として記憶されています。彼の政治手腕は、元朝の政治に大きな影響を与えましたが、その強引な手法は多くの敵を作り、政局を不安定化させる要因ともなりました。

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