シデバラ

シデバラ（ゲゲーン・カアン）：元朝の悲劇的な皇帝

シデバラ（モンゴル語: ᠰᠢᠳᠢᠪᠠᠯᠠ, ラテン文字転写: Šidebala、1302年 - 1323年）は、元朝の第5代皇帝（在位: 1320年 - 1323年）であり、モンゴル帝国の第9代カアンにあたります。ゲゲーン・カアン（Gegen Qa'an）の尊号で知られ、漢文史料では碩徳八剌と記されます。

生涯

仁宗アユルバルワダ（ブヤント・カアン）の長男として生まれたシデバラは、即位前から複雑な政治的背景を抱えていました。父アユルバルワダは、兄である武宗カイシャンとの間で皇位継承の約束を交わしていましたが、武宗の急死後、政変が起こり、武宗の遺児たちは排除されました。さらに、皇太后ダギは、自身の一族であるコンギラト部出身の皇子を擁立しようと画策し、その結果、シデバラが皇太子に選ばれたのです。

1320年、父の崩御により18歳で即位したシデバラでしたが、当時の元朝は財政的に破綻寸前の状態でした。若年の皇帝は、祖母である皇太后ダギとその腹心テムデルの傀儡に過ぎず、政治の実権を握ることができませんでした。ダギは、仁宗の晩年に遠ざけられていたテムデルを再び重用し、政治を壟断しました。

1322年、ダギとテムデルが相次いで亡くなると、20歳になったシデバラはついに親政を開始します。テムデルの政敵であったバイジュを右丞相に起用し、コンギラト派を粛清して新政権を樹立、皇帝主導による体制の立て直しを図りました。具体的には、『大元聖政国朝典章』を頒布して法制度を改め、禁軍を強化するなど、帝権の拡大を目指しました。また、科挙を継続するなど、仁宗以来の漢文化保護政策も引き継ぎました。

しかし、テムデルの一族に対する過酷な弾圧は、コンギラト派の貴族たちに強い恐怖心を与えました。1323年9月、上都から大都への移動中、南坡に滞在していたシデバラの宮廷は、テムデルの義子であるテクシ率いる兵士によって襲撃され、シデバラはバイジュと共に暗殺されました（南坡の変）。

その後、テクシらは晋王イェスン・[[テムル]]を擁立しますが、イェスン・[[テムル]]はテクシらを粛清し、コンギラト派は一掃されることとなりました。

評価

シデバラの治世はわずか3年と短く、親政を行った期間は1年に満たないものの、その間に法制度の改革や帝権の拡大を図ったことは評価されています。特に、漢文化の保護政策を継続したことは、漢人の編纂した史料において高い評価を受けています。そのため、シデバラの暗殺は、漢地派と高原派による政権争いの一環として解釈されることもあります。

后妃

荘静懿聖皇后 スガバラ（速哥八剌）- イキレス部出身。
皇后 イェベ・クトゥルク（牙八忽都魯）
* 皇后 ドルジバル（朶而只班）

シデバラは、若くして即位し、短いながらも帝権の確立と文化の保護に努めましたが、陰謀と暗殺によってその生涯を閉じた悲劇的な皇帝でした。彼の治世は、元朝の政治的混乱と権力闘争を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

もう一度検索