テリー・ギリアムのドン・キホーテ

テリー・ギリアムのドン・キホーテ：映画史に残る「呪われた企画」の全貌

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(2018年)は、テリー・ギリアム監督が長年の構想を実現した、異色のファンタジー・アドベンチャー・コメディ映画です。ミゲル・デ・セルバンテスの不朽の名作『ドン・キホーテ』を大胆に現代風にアレンジし、奇想天外なストーリーと独特の世界観で観客を魅了します。しかし、この映画は制作過程において、映画史に残るほどの困難に見舞われたことでも知られています。

壮大なスケールと19年に及ぶ制作難航

ギリアム監督は1998年からこの映画の制作に着手しました。当初は、巨額の予算と豪華なキャストを予定し、ヨーロッパを舞台にした壮大なスケールで撮影が行われる予定でした。しかし、撮影開始直後から、洪水によるセットの流出、主演俳優の負傷による降板、資金調達問題など、次々と困難が襲いかかります。幾度となく制作は中断され、ギリアム監督は19年もの間、この映画の完成に挑み続けました。その間、キャストの変更も繰り返され、数々の有名俳優の名前が挙がりましたが、様々な理由により実現には至りませんでした。この制作過程の苦悩は、2002年に公開されたドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』にも記録されています。

奇想天外なストーリー：現代のCM監督と狂気のドン・キホーテ

映画の主人公は、CM監督のトビーです。彼はセルバンテスの『ドン・キホーテ』の熱狂的なファンであり、スペインで同作をモチーフにしたCMを制作しようとしますが、撮影は難航し、いつまでも完成しません。そんな中、トビーは10年前に制作した卒業制作映画のDVDを偶然見つけます。この映画も『ドン・キホーテ』を題材としており、その舞台となった村が、現在のCM撮影現場の近くにあったことを知ったトビーは村を訪れます。

しかし、そこで彼を待っていたのは、衝撃的な事実でした。卒業制作映画でドン・キホーテ役を演じた靴職人のハビエルは、自分を本当にドン・キホーテだと信じ込む狂人になっていたのです。トビーは、ハビエルと行動を共にすることになり、現代社会と狂気のドン・キホーテの奇妙な冒険が始まります。

二人は、風車を巨人と思い込んだり、過激派のテロリストの巣窟と思われた村に迷い込んだり、鏡の鎧をつけた騎士と決闘したりと、様々な騒動に巻き込まれていきます。物語は現実と妄想が入り混じる、混沌とした展開を見せ、視聴者を不思議な世界へと誘います。その中で、トビーは自身の過去や、自身の映画が村の人々に与えた影響について深く考えさせられます。

キャストとキャラクター

トビー・グリソーニ役：アダム・ドライバー
ドン・キホーテ（ハビエル・サンチェス）役：ジョナサン・プライス
アンヘリカ役：ジョアナ・ヒベイロ
ジャッキ役：オルガ・キュリレンコ
* ボス役：ステラン・スカルスガルド

その他、個性豊かなキャラクターたちが物語を彩ります。それぞれのキャラクターは、複雑な人間関係や、現代社会の闇を象徴的に描いています。

制作過程の困難と訴訟問題

この映画は、制作過程において多くの困難に直面しました。資金調達問題、キャスト変更、撮影トラブルに加え、訴訟問題まで発生しました。ギリアム監督は、これらの困難を乗り越え、ついにこの映画を完成させました。その過程には、制作陣の粘り強さと、ギリアム監督の強い信念が感じられます。

作品の評価

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、Rotten TomatoesやMetacriticなどの批評サイトでも、賛否両論あるものの、ギリアム監督独特の独創性と、長年の構想の結実として一定の評価を得ています。

まとめ

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、制作過程の困難さ、そして奇想天外なストーリー、個性豊かなキャラクター、社会への鋭い風刺など、多くの要素が絡み合った、まさに「映画史に残る問題作」と言えるでしょう。この作品は、観客に忘れがたい体験と、多くの余韻を残す、唯一無二の作品です。

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