テルスター衛星

テルスター衛星：世界初の通信衛星とその功績

テルスター衛星は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が打ち上げた通信放送衛星であり、特にテルスター1号は、1962年7月10日に打ち上げられ、パリからアメリカへのテレビ中継を成功させ、世界を驚かせました。AT&Tの依頼を受けてベル研究所が製作を担当しました。

テルスター1号

テルスター1号は、約3,600個の太陽電池から供給される14ワットの電力で動作しました。打ち上げから13日後には米欧間でのテレビ放送の生中継が行われ、西ドイツのデュイスブルクにある高炉で働く労働者の様子が送信されました。映像の画質は現代の基準からすると劣悪でしたが、当時の人々にとっては、地球の裏側の出来事をリアルタイムで見ているかのような画期的な体験でした。

しかし、テルスター1号は技術的な限界から低軌道に投入されたため、地上局からの可視範囲に入って送受信できる時間はわずか30分に過ぎませんでした。また、送信機の出力も2.25ワットと小さく、地上局では直径30メートル以上の巨大なパラボラアンテナを用いて、衛星からの信号を100億倍にまで増幅する必要がありました。テルスター1号は、高高度核実験による電磁パルスの影響を受け、運用期間はわずか7ヶ月と短命に終わりました。

テルスター2号

テルスター2号は、1963年5月7日に打ち上げられました。テルスター1号と基本的に同じ機体でしたが、ヴァン・アレン帯における高エネルギー陽子および電子の分布を計測する科学衛星としての役割も担っていました。遠地点はヴァン・アレン帯の外帯を通るよう高度10800キロメートルに設定され、テレメトリ系を用いて科学観測の結果を常時送信していました。テルスター2号は、打ち上げから2年後にVHFビーコンが停止されるまで、全機能が正常に動作していました。

地上局

アメリカ側の地上局は、1961年にメイン州アンドーバーに建設されました。衛星側の送信機出力が小さいため、直径53メートルもの巨大なAT&T製のアンテナが設置されました。ヨーロッパ側の地上局は、フランスのブルターニュ地域圏プルームール＝ボドゥー村近郊に建設され、直径50メートルのドームの中に重量340トンの巨大なアンテナが設置されました。

日本への影響

テルスター衛星は、日本にも影響を与えました。1963年12月31日に放送された第14回NHK紅白歌合戦では、応援ゲストの柳家金語楼がテルスター衛星を彷彿とさせる顔立ちから、「プーパパー、プーパパー、私はテルスターです」と言いながら登場しました。

テルスター1号の短期間での運用終了は、高高度核実験の影響によるものでしたが、その後の通信衛星開発に貴重なデータを提供しました。現在では数千機もの通信衛星が、軍事、科学、通信、放送など様々な分野で利用されており、テルスター1号はその礎を築いたと言えるでしょう。テルスター衛星の技術は、現代の通信インフラに不可欠なものとなっています。

テルスター衛星は動作を停止しましたが、現在でも衛星軌道上に残っており、その歴史的な意義を静かに物語っています。

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