テル・ハラフ

テル・ハラフ遺跡

テル・ハラフ（Tell Halaf）は、シリアの北東部、ハサカ県に位置する新石器時代の考古遺跡であり、興味深い歴史的背景を持っています。トルコとの国境に近いこの地は、シャンルウルファ県と隣接し、ハブール川が流れる肥沃な河谷の近くにあります。この遺跡は、紀元前6千年紀の人々が生息していた場所であり、新石器文化の特徴を色濃く残す文化、すなわちハラフ文化（Halafian culture）発祥の地とも言えます。この文化の重要性は、幾何学模様や動物模様が施された魅力ある釉薬の陶器に表れています。

発掘活動の歴史

テル・ハラフの発掘は、1899年にドイツの外交官兼考古学者のマックス・フォン・オッペンハイムによって始まりました。彼は当時オスマン帝国の支配下にあるこの地域で、バグダード鉄道敷設予定地の調査中に遺跡を発見しました。その後、1911年から1913年にかけて本格的な発掘が行われ、第一次世界大戦による中断を挟んで1929年にも再発掘が行われました。フォン・オッペンハイムは収集した多くの遺物をベルリンに持ち帰り、テル・ハラフ博物館を設立しましたが、悲運にも第二次世界大戦中のベルリン大空襲で多くの遺物が失われました。この事件は中近東考古学史でも最悪の損失とも言われていますが、一部の遺物は後に修復され、再展示がされています。

歴史的経緯

テル・ハラフは、ハラフ文化の典型的な遺跡とされており、紀元前6000年から紀元前5500年頃の北メソポタミア、シリア、アナトリアにおける有土器新石器時代の文化を代表しています。ハラフ文化施行期には、特に陶器の製作が盛んで、地域間の交流があったことが伺えます。その後、紀元前10世紀にはアラム人による都市国家グザナが建設され、また古代ローマやパルティアの時代まで様々な文明の影響を受けながら繁栄しました。

文化と生活様式

テル・ハラフの住民は、乾燥地農業を行い、エンマーコムギや二条オオムギ、亜麻を栽培していました。また、ヒツジやヤギなどの家畜も飼育されていました。特にハラフ文化の特色である「ハラフ式彩文土器」は、動物や幾何学模様が描かれた多彩なデザインが魅力で、職人が手掛けたことを示しています。これらの陶器は地域間で模倣や交換が行われた結果として発展したとも考えられています。

建築と構造物

遺跡での発掘作業では、少数の建物や構造物も見つかっています。特に「アルパチャのトロス」と呼ばれる円形の墓が有名で、その内部は美しいドーム構造をしています。歴史時代に入ると、テル・ハラフの城塞はアラム人やアッシリア人によって建設が行われ、多くの行政建物や神殿が造られました。

以上のように、テル・ハラフは新石器時代の文明の重要な証拠であり、考古学的な意義からも今後の研究が期待されます。

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