テンジクネズミ

テンジクネズミとは

テンジクネズミ（天竺鼠）は、テンジクネズミ科テンジクネズミ属に分類される齧歯類の総称です。南米に分布しており、その名前とは裏腹に、天竺（インド）には生息していません。最も有名な種は、ペットや実験動物として広く知られているモルモットです。

概要

テンジクネズミは、体長が約20～40cmと小型で、丸い耳を持ち、尾はありません。前足には4本、後ろ足には3本の指があります。オスとメスの両方に1対の乳房があります。

跳躍力はあまり高くなく、20～30cm程度の高さしか跳ぶことができません。また、胎内ですでに乳歯を持っていますが、切歯（前歯）は生まれる前に吸収され、臼歯も生後40日程度で生え変わります。切歯と臼歯は生涯伸び続ける常生歯です。上顎の臼歯は外側に、下顎の臼歯は内側に傾斜しながら生えており、切歯は前面のエナメル質が厚いため、常に鋭さを保っています。

消化器官としては、胃腸の半分以上が盲腸で構成されているのが特徴です。ストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れると、消化不良を起こし衰弱します。これは、タンパク質などの栄養素の摂取を盲腸内の細菌の働きに頼っているためです。また、一度に消化しきれなかった栄養を吸収するために、ウサギと同様に食糞を行います。糞の形は、オスとメスで微妙に異なります。

寿命は個体差がありますが、一般的には5～8年程度とされています。

生態

野生のテンジクネズミは、南アメリカ全域の草原などに巣穴を掘って生息しています。草食性で、植物を主な食料としています。つがいは形成せず、乱婚的に交尾を行います。通常、1年に1回出産し、一度に2～4頭程度の子を産みます。生まれた子供は早成で、誕生の翌日には自分で草を食べることができます。そのため、親は子供の世話をほとんどしません。メスの乳房が1対しかなくても、子供の成長に問題はありません。また、子供が早成で胎内で大きく育つため、メスは骨盤の形が固まる生後10ヶ月以内に出産を経験していない場合、難産になりやすいとされています。

現在でも、アンデス地方では重要なタンパク源として食用に利用されています。

種

テンジクネズミ属には、以下の種が含まれます。

アノレームテンジクネズミ (Cavia anolaimae): コロンビアのボゴタ付近に生息。モルモットの野生化したものから派生したと考えられています。
パンパステンジクネズミ (Cavia aperea): アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイに分布。
アマゾンテンジクネズミ (Cavia fulgida): ブラジルに生息。
ギアナテンジクネズミ (Cavia guianae): ベネズエラ、ガイアナ、ブラジル北部に分布。モルモットの野生化したもの、またはパンパステンジクネズミと同種とされることもあります。
サンタカタリーナテンジクネズミ (Cavia intermedia): ブラジルのサンタカタリーナ州モレケス・ド・スル島に生息。
オオテンジクネズミ (Cavia magna): ブラジル南東部およびウルグアイに分布。
コビトテンジクネズミ (Cavia nana): ペルーテンジクネズミと同種とされることもあります。
モルモット (Cavia porcellus): ペルーテンジクネズミより食肉用に家畜化されたと考えられている家畜種。食用とされる他、ペットや実験動物として飼育されています。
* ペルーテンジクネズミ (Cavia tschudii): ペルーに生息。家畜種モルモットの原種と考えられています。

もう一度検索