テンプラニーリョ

テンプラニーリョ：スペインを代表する早熟な黒ブドウ

テンプラニーリョ（Tempranillo）は、スペイン語で「早熟」を意味する言葉に由来する、イベリア半島原産の黒ブドウ品種です。地域によって様々な呼称を持ち、スペインを代表するワインの主要品種として世界中で栽培されています。

歴史

テンプラニーリョは、フェニキア人の時代からイベリア半島で栽培されていたとされ、スペインでは「貴族のブドウ」と呼ばれることもあります。かつてはピノ・ノワールとの関連も指摘されましたが、遺伝子学的研究により否定されています。

17世紀にはスペイン人コンキスタドールによってアメリカ大陸に持ち込まれ、アルゼンチンのクリオーリャ種の起源にも関わっていることが示唆されています。20世紀に入ると、カリフォルニアなど世界各地で栽培が試みられ、気候への適応や栽培技術の確立を経て、国際的な品種としての地位を確立しました。

特徴

テンプラニーリョは、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールなどの香り高い品種とは異なり、比較的控えめな性質を持ちます。そのため、ガルナッチャやカリニャンなどの品種とブレンドされたり、オーク樽での長期熟成が行われたりすることが一般的です。

香りはプラムやイチゴに例えられ、長期熟成により繊細で複雑な味わいを醸し出します。チョーク質の土壌でよく育つ早生品種であり、ポルトガルではティント・ロリスまたはアラゴネスとして知られ、ポート・ワインのブレンドにも使用されます。

栽培

テンプラニーリョは厚い果皮を持つ黒ブドウで、比較的高温な環境を好みます。ただし、極端な暑さにも耐えることができます。一方で、害虫や病気に対する耐性は低く、栽培には注意が必要です。果実は円筒形で、濃い青黒色の実をつけます。

ワイン生産

テンプラニーリョから造られるワインはルビー色を呈し、ベリー、プラム、タバコ、バニラ、レザー、ハーブなどの複雑な香りが特徴です。酸度と糖度が比較的低いため、グルナッシュ、カリニャン、グラシアーノ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどとブレンドされることが多く、リオハやリベラ・デル・ドゥエロなどの主要産地では、ブレンドの主体となる品種として重要な役割を果たしています。

栽培地域

テンプラニーリョは、スペインのリオハ地方が原産地とされており、スペインとポルトガルを中心に広く栽培されています。イベリア半島以外にも、フランス、メキシコ、ニュージーランド、アメリカ合衆国、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンなど、世界各地で栽培されています。

スペイン

スペインでは、リオハとリベラ・デル・ドゥエロが二大栽培地域として知られています。その他、ペネデス、ナバーラ、バルデペーニャスなどでも栽培されています。地域によっては、ティンタ・デル・パイス、ティンタ・デ・トロ、センシベルなど、異なる名称で呼ばれることもあります。

ポルトガル

ポルトガルでは、アレンテージョ地方とドウロ地方で栽培されています。アレンテージョ地方ではアラゴネスとして知られ、赤ワインのブレンドに使用されます。ドウロ地方ではティンタ・ロリスとして知られ、主にポート・ワインのブレンドに使用されます。

その他の地域

近年では、フランスのラングドック地方でもテンプラニーリョが栽培されています。新世界では、カリフォルニア、テキサス、オレゴン、ワシントンなどで栽培されており、オーストラリアやタイなどでも導入が進んでいます。また、アルゼンチン、チリ、メキシコなど、ラテンアメリカでも広く栽培されています。

別名

テンプラニーリョは、特に多くの別名を持つ品種としても知られています。以下はその一部です。

アルビーリョ・ネグロ
アラゴン
センシベル
ティンタ・ロリス
ティンタ・フィナ
ウイ・ダ・リエブラ
* バルデペーニャス

テンプラニーリョは、その多様な表情と適応力の高さから、今後も世界中で愛され続けるでしょう。

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