テンプル・ブロック

テンプル・ブロック（temple block）

東洋文化における木魚をルーツに持つテンプル・ブロックは、西洋音楽に取り入れられた打楽器の一種です。その名の通り、寺院（temple）を連想させる形状に由来するとも言われています。

特徴

テンプル・ブロックは、木材やプラスチックで作られており、楽器本体に大きなスリットが入っているのが特徴です。伝統的なものは木魚に似た丸みを帯びた形状をしていますが、現代では扱いやすい長方形のものも広く用いられています。

音色はウッドブロックに似ていますが、テンプル・ブロックの音はより柔らかく、くぐもった響きを持ちます。また、単なる打撃音に留まらず、楽器ごとに異なる音高を感じられるのが大きな特徴です。この音高の違いを利用して、複数のテンプル・ブロックを組み合わせて使用することが一般的です。

歴史と用途

テンプル・ブロックは、西洋音楽においては比較的新しい楽器と言えます。初期の頃は特にジャズドラマーによって使用され、そのユニークな音色やリズム表現に活用されました。20世紀に入り現代音楽が発展するにつれて、オーケストラや吹奏楽といったクラシック系の編成でも積極的に用いられるようになりました。

管弦楽や吹奏楽における使用例としては、楽曲のアクセントや特殊効果としてだけでなく、複数個を組み合わせることで短い旋律的なパッセージやグリッサンドのような効果を生み出すなど、多様な表現に貢献しています。特定の雰囲気を醸し出すのに効果的な楽器として、現代の作曲家によって広く活用されています。

演奏方法

テンプル・ブロックを演奏する際は、通常、音高の異なる4個から5個程度のセットが使用されます。これらの楽器は音高順に並べられ、専用のスタンドに固定して演奏します。奏者はマレット（ばち）を用いて楽器の叩き面を叩き、音を出します。

クラシック音楽などの演奏会においては、奏者はテンプル・ブロックのスタンドの前に立って演奏する「立奏」のスタイルが一般的です。スタンドは高さが調整可能で、奏者が無理なく演奏できるようになっています。

主な使用楽曲例

テンプル・ブロックは、その特徴的な音色から多くの作曲家に愛用されています。以下に、代表的な楽曲の一部を挙げます。

管弦楽

シンコペイティッド・クロック（ルロイ・アンダーソン）
そりすべり（ルロイ・アンダーソン）
エル・サロン・メヒコ（アーロン・コープランド）
交響曲第2番『不安の時代』（レナード・バーンスタイン）
交響曲第3番『カディッシュ』（レナード・バーンスタイン）
トゥランガリーラ交響曲（オリヴィエ・メシアン）
アッシジの聖フランチェスコ（オリヴィエ・メシアン）
彼方の閃光（オリヴィエ・メシアン）
交響三章（三善晃）

吹奏楽

朝鮮民謡の主題による変奏曲（ジョン・バーンズ・チャンス）
呪文と踊り（ジョン・バーンズ・チャンス）
シーゲート序曲（スウェアリンジェン）
パガニーニの主題による幻想変奏曲（ジェイムズ・バーンズ）
Jalan-jalan 〜神々の島の幻影〜（高橋伸哉）
科戸の鵲巣 吹奏楽のための祝典序曲（中橋愛生）
Tuba Concerto（吹奏楽版）（マーティン・エレビー）

主なメーカー

テンプル・ブロックは様々な楽器メーカーから製造・販売されています。代表的なメーカーとしては、グローバー（Grover Pro Percussion）、プレイウッド（PLAYWOOD）、川端楽器などが挙げられます。各メーカーから様々な素材や形状、音高のモデルが提供されています。

テンプル・ブロックは、その独特な音色と演奏スタイルで、楽曲に彩りやアクセントを加える重要な役割を担っています。現代の打楽器アンサンブルやオーケストレーションにおいて欠かせない楽器の一つと言えるでしょう。

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