テンプロ・マヨール

テンプロ・マヨール：アステカ文明の象徴

テンプロ・マヨール（スペイン語: Templo Mayor）は、かつてアステカの中心都市テノチティトランの心臓となっていた壮大な神殿です。この神殿は、現代のメキシコシティの中心に位置し、現在ではその存在がアステカの栄光を象徴しています。しかし、16世紀にはスペイン人によって破壊され、その上に新しい都市が築かれました。1978年から始まった大規模な発掘調査により、この神殿の構造と歴史が少しずつ明らかになってきました。

概要

テンプロ・マヨールの名称は、スペイン語で「主神殿」または「大神殿」を意味し、ナワトル語においては「ウェイテオカリ」（Huēyteocalli）、「大きな神の家」を指します。この神殿が存在したテノチティトランの中心部には、周囲を壁で囲まれた聖域があり、広さは約25ヘクタールに及ぶとされています。その中には78棟ほどの建物があり、テンプロ・マヨールはその中心的存在とされていました。

このピラミッドは西を向いて建設され、上部には軍神でありメシカの守護神であるウィツィロポチトリ（南側）と、アステカ以前から崇拝されている雨と豊穣の神トラロック（北側）の2つの神殿が配置されています。興味深いことに、テンプロ・マヨールの設計は春分の日に太陽が昇るように巧妙に計算されており、真西からわずか南に7度傾いています。

歴史的背景

テンプロ・マヨールは1390年ごろに造られ始め、1521年にスペインによって滅ぼされるまで、数世代にわたって再建と拡張が行われました。古いピラミッドの上に新しいピラミッドを重ねる手法が取られ、少なくとも7回の建設段階が確認されています。最終的には高さ40メートルから50メートルに達し、底辺の広さは約82メートル四方にまで成長しました。

さらに、テンプロ・マヨールの前には円形の神殿が存在し、エエカトルの神に捧げられていました。聖域内には、球戯場や頭蓋骨を安置する場所（ツォンパントリ）もあり、他にも多数の神々に捧げられた神殿や貴族の子供のための学校（カルメカク）がありました。

しかし、この壮大な文明は16世紀初頭にエルナン・コルテスと現地の同盟軍によって破壊されてしまいました。

発掘の経緯

1978年、メキシコの考古学者イグナシオ・マルキナは、テノチティトランの古代の話を描いた地図を作成しました。彼は以前の建物が現代のどこにあったかを明らかにしようとしていましたが、多くの人々は500年以上前に破壊された建物の基礎が今も残るとは考えていませんでした。しかし、その年の電力会社の工事中に、直径3.25メートルの円板状の遺物が発見され、さらに多くの謎が浮き彫りになりました。

メキシコ政府はこの発見を重視し、エドゥアルド・マトス・モクテスマの指導のもと、大規模な発掘プロジェクトが始まりました。1970年代から80年代にかけて行われた発掘により、テンプロ・マヨールの遺構が次々と明らかにされ、スペイン統治時代の建物が発掘作業によって破壊されました。

遺物の発見

発掘作業では、多くの奉納物が発見されました。中でも特に注目されたのがコヨルシャウキの円板で、この遺物はウィツィロポチトリがコヨルシャウキを殺したという神話の象徴とされています。また、雨の神トラロックに捧げられた奉納物も大量に見つかり、珊瑚や貝殻、さらには水を表すと思われる物品が多数発見されました。これらの遺物からは、アステカ帝国の文化や信仰の深さを知る上で非常に貴重な情報が得られました。

テンプロ・マヨールは、今も多くの人々にその歴史を語りかけ、アステカ文明の偉大さを物語る重要な遺産として人々の記憶に残り続けています。

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