ディアブラーダ

ディアブラーダ：アンデスの悪魔の踊り

ディアブラーダ（Diablada）は、南米アンデス地方、特にアルティプラーノ高原地帯で受け継がれてきた伝統的な踊りです。「悪魔の踊り」を意味し、ダンサーはけばけばしい悪魔のマスクと衣装を身につけ、街を練り歩きながら踊ります。この踊りは、スペイン植民地時代に、宣教師が先住民にキリスト教の教えを説くために用いられたことが始まりとされています。

起源

ディアブラーダの起源には、ボリビアとペルーの2つの説があります。アンデス文明圏に位置する両国は、互いに影響し合いながら独自のディアブラーダを育んできました。

スペインから来た宣教師は、七つの大罪を教えるために、天使と悪魔に見立てた芝居がかった踊りを先住民に見せました。この踊りは、地元の文化と融合し、スペインとアンデスの文化が混ざり合った独特の表現へと発展しました。

ボリビアのオルロのカーニバルは、ユネスコによって無形文化遺産に登録されています。この祭りは、かつてオルロに住んでいたウル族が崇拝した神ティウに捧げる祭りであると推定されています。また、ディアブラーダは、ポトシなどの鉱山都市で、鉱夫たちの間で広まったという説もあります。1538年頃には、アウラガス（現在のボリビア・ポトシ県北部）の鉱山で、キリスト教文化とアンデスの地元宗教が融合し、キリスト教の宗教的な像が地元の宗教のシンボルとして用いられるようになったことが起源とも言われています。

一方、ペルーの説では、現在のプーノ県にあたるアルティプラーノのチチカカ湖周辺に住むルパカ族が1576年に始めたとされています。いずれにせよ、ディアブラーダは長い時間をかけて南米各地で独自に発展し、様々な形を持つようになりました。

舞踊

ディアブラーダの踊りには、シクリと呼ばれる楽団が伴います。アルティプラーノ地方では、バンドやオーケストラが演奏することもあります。舞踊のステップや衣装は多様で、道路などの屋外や劇場、アリーナなど、様々な場所で踊られます。

舞踏団の先頭は、ルシファーやサタン、女鬼（China Supay）といった悪魔の象徴です。それに続き、傲慢、色欲、憤怒、暴食、嫉妬、強欲、怠惰の七つの大罪を象徴する悪魔たちが練り歩きます。また、聖ミカエルが天使の集団を率い、悪魔と対峙します。天使と悪魔の一団は、踊りながらクロスや円を描くなど、様々なフォーメーションでマーチングを行います。このマーチングは、聖ミカエルの一団が悪魔の一団を打ち破るというストーリーを表現しています。

ディアブラーダのコスチュームは豪華で、重いものでもあります。踊りは3つの部分から構成され、それぞれに7種類の動きがつけられています。

ディアブラーダから発展したもの

ディアブラーダは、南米の様々な祭りや文化に影響を与えています。

オルロのカーニバル：南米三大祭りの一つとして知られています。
プレナのディアブラーダ
カンデラリアの祭り
ティラナの祭り
* 映画「地下の民」：ディアブラーダを踊りに故郷の寒村に歩いて帰る男を描いたホルヘ・サンヒネスの映画


ディアブラーダは、単なる踊りではなく、南米の歴史、宗教、文化が融合した、奥深い表現です。そのけばけばしい衣装と独特の音楽は、見る者を魅了し、アンデスの人々の魂を伝えます。

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