ディエゴ・コラレス

ディエゴ・コラレス（Diego Corrales）は、1977年 8月25日にアメリカ合衆国サウスカロライナ州コロンビアで生まれたプロボクサーです。愛称は「チコ」。スーパーフェザー級とライト級の二つの階級で世界王座を獲得し、その強打と攻撃的なスタイルで多くの激闘を繰り広げ、ファンを熱狂させました。しかし、その短いキャリアは光と影、そして予期せぬ形で幕を閉じます。2007年 5月7日、わずか29歳でこの世を去りました。

プロキャリアの始まりとスーパーフェザー級での栄光

1996年3月19日、19歳でプロのリングに上がったコラレスは、デビュー以来快進撃を続け、無敗のまま世界タイトル戦へと駒を進めます。1999年10月23日、当時32戦無敗だったロベルト・ガルシアとの一戦で、コラレスは7ラウンドTKO勝利を収め、IBF世界スーパーフェザー級王座を手に入れました。さらに2000年3月18日には、デリック・ゲイナーを3ラウンドTKOで下し、IBF王座の3度目の防衛に成功すると同時にIBA世界スーパーフェザー級王座も獲得します。

IBF王座を3度防衛した後、コラレスはWBC同級王者だったフロイド・メイウェザー・ジュニアとの頂上決戦に挑むため、IBF王座を返上します。しかし、この試合でコラレスはメイウェザーの卓越したスピードとテクニックに翻弄され、5度のダウンを奪われた末に10ラウンドTKOでキャリア初黒星を喫し、王座獲得は叶いませんでした。

私生活の困難と復帰

メイウェザー戦の数ヶ月後、コラレスは妊娠していた妻への暴行容疑で逮捕され、14ヶ月間収監されるという私生活のトラブルに見舞われます。この出来事により、彼は約2年間に及ぶ長期のブランクを余儀なくされ、また、妻との離婚も経験しました。

2003年にリングに復帰したコラレスは、調整試合を4試合こなした後、再び世界の舞台を目指します。2003年10月4日、IBF王座への挑戦権をかけた試合で、因縁のライバルとなるホエール・カサマヨールと対戦。両者ダウンを奪い合う激しい攻防となりましたが、コラレスが負傷により6ラウンドTKO負けを喫し、挑戦権獲得に失敗します。しかし、翌2004年3月6日のカサマヨールとの再戦では、熱戦の末に2-1の僅差判定で勝利。この勝利により、空位となっていたWBO世界スーパーフェザー級王座とIBA世界スーパーフェザー級王座を獲得し、再び世界のベルトを腰に巻きました。

ライト級での2階級制覇と伝説の激闘

カサマヨールとのリターンマッチでの勝利後、コラレスは階級をライト級に上げます。2004年8月7日には、当時35戦無敗のWBO世界ライト級王者、アセリノ・フレイタスに挑戦。この試合でもコラレスはアグレッシブな攻めを見せ、合計3度のダウンを奪い10ラウンドTKOで勝利。見事に2階級制覇を達成しました。

そして2005年 5月7日、コラレスのキャリアで最も語り継がれる一戦が訪れます。WBC世界ライト級王者ホセ・ルイス・カスティージョとの王座統一戦です。この試合は壮絶な打撃戦となり、迎えた10ラウンド、コラレスはカスティージョの猛攻を受けて立て続けに2度のダウンを奪われます。誰もが試合終了を確信したその瞬間、コラレスは不屈の闘志で立ち上がり、なんと直後に逆にカスティージョからダウンを奪い返し、そのままKOするという驚異的な大逆転勝利を収め、WBC世界ライト級王座も獲得し王座統一に成功しました。

しかし、この試合ではコラレスがダウン時に意図的にマウスピースを吐き出して時間を稼いだという疑惑や、レフェリーの判断が論議を呼び、同年10月8日にリターンマッチが組まれます。ところが、前日計量でカスティージョが体重超過したため、この試合はノンタイトル戦となりました（コラレスは再戦前にWBO王座を返上）。この非情な展開の中、コラレスは体重オーバーのカスティージョの強打を受け、4ラウンドKO負けを喫してしまいます。さらにカスティージョとは2006年6月3日にラバーマッチが予定されていましたが、またしてもカスティージョが計量をパスできず、激怒したコラレス陣営が対戦を拒否したため、試合は中止。コラレス陣営は損害賠償訴訟を起こす事態となりました。

度重なる計量問題はコラレス自身にも及びます。WBC王座の防衛戦として2006年10月7日に予定されていたカサマヨールとのライト級での再戦では、今度はコラレスが計量に失敗。試合前にWBC王座を剥奪されてしまいます。試合自体は行われ、コラレスは12回判定でカサマヨールに勝利しましたが、王座は失いました。

キャリアの終焉と突然の死

ライト級での体重管理に苦労していたコラレスは、2007年に入り一気に2階級上のウェルター級への挑戦を決意します。復帰戦の相手に選んだのは、前年にアントニオ・マルガリートの世界王座に挑戦したばかりのジョシュア・クロッティでした。2007年4月7日に行われた試合で、コラレスはクロッティに2度のダウンを奪われるなど一方的な展開となり、10回大差判定で敗北。これで3連敗となり、引退説も囁かれましたが、試合後すぐに再起を誓いました。

しかし、この試合がコラレスの最後のファイトとなりました。2007年 5月7日夜、ラスベガスでオートバイを運転中、前方を走る自動車を追い越そうとして接触事故を起こし、死去。彼の体内からはアルコールが検出され、その血中アルコール濃度は法定基準値の3倍以上だったと報じられています。壮絶なリング上の戦いを駆け抜けた「チコ」は、図らずもその短い人生に幕を下ろしました。

彼のプロキャリアは45戦40勝（33KO）5敗という記録を残しています。

獲得した主なタイトル

IBF世界スーパーフェザー級王座
WBO世界スーパーフェザー級王座
WBC世界ライト級王座
WBO世界ライト級王座
* IBA世界スーパーフェザー級王座

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