ディシプリン (キング・クリムゾンのアルバム)

キング・クリムゾン『ディシプリン』：変革と再評価

1981年、キング・クリムゾンはアルバム『ディシプリン』を発表し、約7年ぶりに音楽シーンへ復帰を果たしました。この作品は、エイドリアン・ブリュー（ギター、ボーカル）とトニー・レヴィン（ベース）という新たな才能を迎え、バンドの新たな時代を切り開くものとなりました。

キング・クリムゾンの変遷

1969年の結成以来、キング・クリムゾンはメンバーチェンジを繰り返しながらも、常に革新的な音楽を追求してきました。しかし、1974年にアルバム『レッド』を発表後、バンドは一度解散。中心人物であるロバート・フリップ（ギター）は音楽界から一時引退しますが、1976年にピーター・ガブリエルのソロアルバム制作に参加し、復帰を果たします。

フリップはその後、独自の音楽技法「フリッパートロニクス」を開発し、ソロアルバム『エクスポージャー』を含む「MOR・3部作」を制作。1980年には、ダンスミュージックの要素を取り入れた「ディスコトロニクス」を披露するなど、新たな音楽の可能性を追求しました。また、ライブ活動にも意欲的に取り組み、『リーグ・オブ・ジェントルメン』を結成し、ヨーロッパと北米で広範囲なツアーを行いました。

『ディシプリン』の誕生

1981年、フリップは、かつてのキング・クリムゾンのメンバーであるビル・ブルーフォード（ドラムス、パーカッション）、デヴィッド・ボウイを通じて知り合ったエイドリアン・ブリュー、そしてガブリエルのアルバム制作で共演したトニー・レヴィンと共に、「ディシプリン」という新たなバンドを結成します。彼らはすぐにキング・クリムゾンへと改名し、7年ぶりの復活を遂げました。

アルバム『ディシプリン』は、アフリカの民族音楽を基調としたポリリズムや、当時流行の兆しを見せていたディスコサウンドを導入するなど、以前のキング・クリムゾンとは大きく異なるスタイルが特徴です。しかし、この変化はファンの間で賛否両論を巻き起こしました。伝統的なキング・クリムゾンのイメージを持つファンの中には、アメリカ人であるブリューとレヴィンの参加や、ディスコサウンドを取り入れた新曲に戸惑いを覚える人もいました。

新たな音楽性の追求

ブリューは作詞も担当し、「エレファント・トーク」のような言葉遊びを披露するなど、バンドに新たな風を吹き込みました。しかし、その一方で、以前の歌詞に見られた文学的な世界観とは異なる作風に、否定的な意見を持つファンもいました。

『ディシプリン』に続く『ビート』（1982年）と『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』（1984年）も同じメンバーで制作されましたが、1984年7月11日のモントリオール公演を最後にバンドは解散。「ディシプリン・クリムゾン」と呼ばれるこの時期の作品群は、フリップ自身によって「レコード会社との契約枚数を消化するために作った」と評されています。

再評価と影響

フリップは『ディシプリン』を、『クリムゾン・キングの宮殿』（1969年）や『レッド』（1974年）と並ぶ「歴代キング・クリムゾンの傑作」と位置づけています。1994年には、「ダブル・トリオ・クリムゾン」が結成され、その完成度の高さからディシプリン・クリムゾンへの再評価が高まりました。現在では、『ディシプリン』もキング・クリムゾンの歴史における重要な作品として広く認識されています。

アルバムジャケットは、『ディシプリン』が赤、『ビート』が青、『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』が黄を基調としており、フリップがゲオルギイ・グルジエフに心酔していたこともあり、「彼らは最初から3枚で解散する予定だった」という神秘主義的な意見も存在します。

『ディシプリン』は、キング・クリムゾンの音楽性を大きく変革した作品であり、その後の音楽シーンに大きな影響を与えました。賛否両論はありましたが、このアルバムがキング・クリムゾンの歴史において重要なターニングポイントとなったことは間違いありません。

収録曲

1. エレファント・トーク - "Elephant Talk"
2. フレーム・バイ・フレーム - "Frame By Frame"
3. 待ってください - "Matte Kudasai"
4. インディシプリン - "Indiscipline"
5. セラ・ハン・ジンジート - "Thela Hun Ginjeet"
6. ザ・シェルタリング・スカイ - "The Sheltering Sky"
7. ディシプリン - "Discipline"

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