ディスコード・レコード

ディスコード・レコード（Dischord Records）とは

ディスコード・レコードは、1980年にワシントンD.C.で設立されたインディー・レコードレーベルです。高校生バンド、ティーン・アイドルズの活動資金を元に、地元のパンクバンドを支援する目的で誕生しました。

USハードコアシーンの重要な拠点として、ワシントンD.C.をアメリカのアンダーグラウンドシーンに知らしめました。その後、フガジ（Fugazi）のような影響力のあるバンドを輩出し、USインディーシーンを代表するレーベルとして世界的に知られるようになりました。しかし、ワシントンD.C.周辺のバンドのみをリリースするという原則は、設立から25年以上変わっていません。

配給は、ジョン・ローダーが運営するイギリスのサザン・レコードが行っています。

設立の経緯

ティーン・アイドルズ解散後、イアン・マッケイ、ジェフ・ネルソン、ネイザン・ストレイチェクは、バンドの貯金600ドルを元に、D.C.地域のハードコアバンドのレコードを自主制作することを決意しました。当初の目標は、マッケイとネルソンが始めたマイナー・スレットの音源制作でしたが、マッケイの友人であったヘンリー・ガーフィールドが参加したステート・オブ・アラートもEP盤をリリースしました。1981年には、マイナー・スレットのEP2作品、ユース・ブリゲード、GIsと合わせて計5作品をリリースしました。

これらのリリースは、アメリカ各地のパンクコミュニティで大きな反響を呼びました。マイナー・スレットの音楽性や、ストレート・エッジの思想が、口コミやファンジンを通して広まっていきました。1982年には、DCバンドのサンプラーアルバムが1週間で完売し、追加プレスが行われました。マイナー・スレットは全米ツアーを行い、DCハードコアの名声を高めました。

しかし、ハードコアシーンの規模拡大に伴い、バンドとオーディエンスの垣根のないコミュニティを作るというマッケイの理想の実現は困難になりました。メンバー間の意見の相違が深まり、1983年にマイナー・スレットは解散しました。ディスコードも新譜リリースが滞る一方、レコードの受注は増加し、マッケイとネルソンはレーベル運営に専念することになりました。大手インディーレーベルからの支援の申し出がありましたが、サザン・レコードとの提携を選びました。

革命の夏とその後

1985年、エイミー・ピカリングのアイデアから生まれた「革命の夏」は、ライツ・オブ・スプリングやビーフイーターといった革新的なバンドの共感を呼び、音楽を通じたDIY的社会改革運動を目指すPositive Force DCと連携した新たな方向性を打ち出しました。イアン・マッケイはフガジを結成し、DIY精神と反商業主義を実践したライブツアーを世界各地で行いました。ネルソンは、ジャケットやポスターのデザインを通じて運動に参加しました。ディスコード周辺では、グループハウスを中心とした活動が活発化し、Riot Grrrl運動につながる女性によるシーン作りなど、実験的なアンダーグラウンド活動が展開されました。

1990年代初頭の「オルタナ」ブームの中で、フガジのメジャー契約やディスコードの買収が噂されるようになりましたが、イアン・マッケイはインディーレーベルとしてのディスコードを堅持し、大手商業メディアのインタビューには応じないという姿勢を貫きました。

現在のディスコード

2002年のフガジの活動休止後、新たなバンドのリリースは減少しています。マッケイは、レーベルはDCのコミュニティとともに存続するものであり、DCのパンクコミュニティが活動を停止すればディスコードも活動を停止すると述べていますが、ディスコードのバンドを聞いて育った世代の音楽もリリースすることを明言しています。

ネットワーク

ディスコードは、DCの地域レーベルとしての性格を重視し、DC以外のバンドをリリースしませんが、共同制作という形で他地域の自主レーベルと関係を保っています。タッチ・アンド・ゴーやX-Claimなどのレーベルと共同リリースを行いました。

また、サブ・ポップのブルース・パヴィットや、ソニック・ユースのサーストン・ムーアなど、他地域のミュージシャンや関係者も、ディスコードやその周辺のバンドに影響を受けています。

主なアーティスト

Minor Threat
Fugazi
State of Alert
Youth Brigade
Government Issue
Scream
Marginal Man
Rites of Spring
Beefeater
Jawbox
* Shudder to Think

ディスコード・レコードは、ワシントンD.C.のパンクシーンを支え、DIY精神を貫くインディーレーベルとして、その影響力は今もなお続いています。

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