ディミトリオス・カンダクジノス

ディミトリオス・カンダクジノス（Demetrios I Kantakouzenos）

ディミトリオス・カンダクジノス（1343年頃 - 1384年）は、東ローマ帝国パレオロゴス王朝時代のモレアス専制公領の統治者であり、尊厳公（セヴァストクラトル）の称号を有していました。彼は「ディミトリオス1世」とも呼ばれ、共同皇帝マテオス・カンダクジノスを父に、ヨアニス6世カンダクジノスを祖父に持ちます。

生涯

ディミトリオスは、父マテオスが統治するトラキア地方で幼少期を過ごしました。1357年12月、父が退位すると、ヨアニス5世パレオロゴス帝から尊厳公の称号を授与されます。1361年頃には、父に従い、兄ヨアニス専制公や姉妹と共に、叔父マヌイル・カンダクジノスが統治するモレアス専制公領へ移住しました。

叔父の死後、父マテオスはコンスタンティノポリスから新たな専制公が派遣されるまでの間、モレアス専制公領を代行統治することになります。しかし、後継者としてセオドロス1世パレオロゴスが到着する前に父が1383年6月に死去。これを受けてディミトリオスは、自らが専制公領の統治者となることを主張し反逆を起こします。

彼はラテン人とトルコ人の傭兵隊を率いてセオドロス1世と激しく争いましたが、翌1384年に急死し、内乱は終結しました。

子孫

ディミトリオスには3人の息子と2人の娘がいました。娘のイリニはセルビア公ジュラジ・ブランコヴィチと、エレニはトラペズス皇帝ダヴィド・コムニノスとそれぞれ結婚しました。

長男と目されるゲオルギオスは、モレアス専制公領でコンスタンディノス専制公に仕えた後、セルビアに移住して義兄弟のブランコヴィチに仕えました。彼には4人の息子と5人の娘がいました。

次男アンドロニコスは東ローマ宮廷に仕え、帝国最後の帝国軍総司令官（メガス・ドメスティコス）に就いてコンスタンティノポリス防衛戦に従軍し戦死しました。彼の一人息子は大公ルカス・ノタラスの娘婿でしたが、首都陥落後に捕虜となり、ノタラスらと共に処刑されました。

第3子ソマスも長兄同様にセルビア公国、及び恐らくボスニア王国に仕え、ボスニア陥落後の1463年7月25日に死去しました。

ディミトリオス・カンダクジノスは、短期間ながらモレアス専制公領の統治者として激動の時代を生き、その子孫は東ローマ帝国、セルビア、トラペズス帝国といった各地で重要な役割を果たしました。

(本項目の表記は中世ギリシア語の発音に依拠しています。古典式慣例表記については各リンク先の項目をご参照ください。)

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