デイビー・クロケット (戦術核兵器)

M388 デイビー・クロケットについて

M388デイビー・クロケットは、アメリカ合衆国によって設計された戦術核兵器システムです。この兵器の名称は、アラモの戦いで犠牲になった英雄デイヴィッド・クロケットに由来しています。M388は、W54核弾頭を搭載するための弾頭であり、砲システム名としてはM28およびM29があり、発射装置はM63およびM64とされます。

開発の背景

第二次世界大戦後、アメリカはソ連との関係悪化に伴い、「大量報復戦略」を採用しました。この戦略は、直接戦争を抑止するには適していましたが、局地戦や小規模な紛争に対しては効果が薄いことが明らかになりました。そのため、アメリカはより柔軟な対応が可能な核兵器の開発を推進することになりました。在ヨーロッパのソ連軍に対抗するため、歩兵部隊が運用しやすい核兵器の実現が急務とされ、BGADS計画が1957年に策定されました。

この計画は、陸軍参謀総長マクスウェル・D・テイラー大将が推進するペントミック師団の構成要素として重要視されました。開発は高い優先順位が与えられ、1958年に始まりました。当初、既存の無反動砲に搭載可能な形で設計されましたが、適したサイズの核弾頭の開発が難航し、専用の発射装置の開発へと方針が転換されました。

開発プロセス

BGADS計画の進行にともない、軽型の無反動砲XM28や大型のXM29システムが設計され、指定されたサイズや重量を持つ核弾頭の開発が進められました。1958年にはデイビー・クロケットの名称が公式に決まり、1961年には最小の核弾頭であるW54が完成し、これを基にしたM388デイビー・クロケットが制式採用されました。総数2,100発が生産され、主に西ドイツに配備されました。

生産と配備

1961年から1971年にかけて生産されたM388は、特に西ドイツ駐留の米軍に配備されました。M28は段階的にM29に置き換えられ、M29のみが実戦装備として運用されました。核弾頭の実射訓練は、ネバダ核実験場をはじめポハクロア演習場で実施され、訓練においては劣化ウランを用いた測距銃も使用されました。

1971年には全てのM388が退役し、1991年にはすべてが廃棄されました。冷戦の終結による核兵器の不要な負荷から脱却する時代に突入していったのです。

日本での配備

日本でも、アメリカの沖縄基地にM388が配備されていたことが確認されています。このことは、戦争の影響や戦術的選択を考慮した際、冷戦時代の核兵器の存在がどのように広がっていたかを示しています。

構造と機能

M388デイビー・クロケットは、無反動砲に核弾頭を装填して運用するシステムです。口径4.7インチ（M63）および6.1インチ（M64）の無反動砲が使用されました。弾頭の周囲には安定翼がつけられていますが、その独特の形状から「原爆スイカ」とも呼ばれました。

発射装置はガス噴射式で、放射線の影響を最小限に抑えるためのリモコンスイッチで発射する方式が採用されていました。弾頭は可変式核出力を持ち、爆発時の威力は調整可能でした。発射手順には、最初に測距銃で目標を確認し、弾頭が最も効果的な高度で炸裂するように設定することが求められました。

まとめ

M388デイビー・クロケットは、戦術核兵器としての歴史的役割を持つ兵器であり、その開発と配備の経過は冷戦時代の軍事戦略における重要な一面を示しています。このシステムは、アメリカの核抑止力を強化するためのものであり、その運用は高い精度と規制を必要としました。今日では、多くが博物館や資料館で展示され、その歴史を今に伝えています。

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