デジタル・プラットフォーマー

デジタルプラットフォーム事業者とは

デジタルプラットフォーム事業者とは、情報通信技術（ICT）やデータを活用し、ユーザーに多種多様なサービスの「場」を提供する事業者の総称です。これらの事業者が提供するサービスやツールは、デジタルプラットフォームと呼ばれ、私たちの生活やビジネスに深く浸透しています。

デジタルプラットフォームの例

具体的には、以下のようなサービスがデジタルプラットフォームとして挙げられます。

電子商取引: オンラインマーケットプレイスやアプリストアなど、商品やサービスをオンラインで売買する場
調査・学習支援: 検索エンジンやAIアシスタントなど、情報収集や学習をサポートするツール
コミュニケーションツール: SNSやメッセージングサービスなど、人々が交流する場
コンテンツ生成・配信・閲覧: 動画共有サービス、ニュースアグリゲーター、音楽ストリーミングサービス、生成AIなど、コンテンツを作成、共有、視聴する場
技術基盤: ウェブブラウザ、クラウドコンピューティングサービス、OSなど、デジタルサービスを支える基盤
オンライン広告サービス: 広告主とメディアをつなぎ、広告配信を支援するサービス

デジタルプラットフォームの重要性と課題

デジタルプラットフォームは、私たちの生活に欠かせない存在であるだけでなく、ビジネス機会の創出や経済成長を促進する役割も担っています。

しかし、その影響力の大きさから、独占的な地位を築き、市場メカニズムを歪めるという負の側面も存在します。また、サイバー攻撃による個人データ漏洩や、違法コンテンツの拡散など、デジタルプラットフォームが悪用される社会問題も発生しています。

このような背景から、各国・地域ではデジタルプラットフォーム事業者を規制する法制度を整備しています。例えば、EUではユーザー数や影響力の大きい事業者をVLOP（超大規模オンラインプラットフォーム）として分類し、規制対象としています。日本でもデジタルプラットフォーム取引透明化法が制定され、特定事業者が監視対象となっています。

また、GAFAやGAFAMといった集合名詞は、世界的に影響力の大きい事業者を指す言葉として使われています。これらの企業は、AI分野でも積極的に投資・開発を行っており、AI技術の進化にも大きな影響を与えています。

主要な事業者とサービス

以下に、代表的なデジタルプラットフォーム事業者と提供サービスをまとめました。

(■) Alibaba Group: オンラインショッピングのAlibaba.com、AliExpress、クラウドコンピューティングのAlibaba Cloudなどを運営（中国）
(■●★) Amazon.com: オンラインショッピングのAmazon、クラウドコンピューティングのAWS、仮想アシスタントのAmazon Alexaなどを運営（アメリカ）
(■●★) Apple: アプリストアのApple App Store、iTunes、モバイルOSのiOS、仮想アシスタントのSiriなどを運営（アメリカ）
(■) Booking Holdings: オンライン旅行・宿泊予約サイトBooking.com、Agodaなどを運営（オランダ）
Baidu: 検索エンジンなどを運営（中国）
(■●) ByteDance: 動画SNSのTikTokなどを運営（中国）
Daum: ニュースアグリゲーター（韓国）
Discord: 音声・動画・文字チャットサービス
(■●★) Googleと親会社Alphabet: アプリストアのGoogle Play、地図・店舗情報Google マップ、動画共有サービスYouTube、検索エンジンGoogle 検索、Google 広告などを運営（アメリカ）
(★) LINEヤフー: メッセージングサービスのLINE、ポータルサイトのYahoo! JAPANなどを運営（日本）
(■●★) Meta: SNSのFacebook、Instagram、メッセージングサービスのWhatsAppなどを運営（アメリカ）
(■●) Microsoft: ビジネスSNSのLinkedIn、検索エンジンのBing、ニュースアグリゲーターMicrosoft Startなどを運営（アメリカ）
Naver: 検索エンジンNaverを運営（韓国）
(■) PDD Holdings (拼多多): オンラインショッピングのTemuを運営（中国）
(■) Pinterest: 写真SNSのPinterestを運営（アメリカ）
(■) Pornhub|pornhub: ポルノ動画シェアサイトを運営（カナダ）
Reddit: 掲示板型SNS、ニュースアグリゲーターを運営（アメリカ）
(■) Shein: ファッションECサイトを運営（中国/シンガポール）
(■) Snap Inc.: Snapchatなどを運営（アメリカ）
(■) Stripchat: ポルノ動画配信サイト
Telegram: メッセージングサービス（ロシア/ドバイ）
Tencent: メッセージングサービスのWeChat、Tencent QQなどを運営、世界最大級のゲーム会社（中国）
(■) WGCZ Holding: ポルノ動画シェアサイトXVideos、XNXXを運営（フランス/チェコ）
(■) Wikimedia Foundation: Wikipediaなどを運営（アメリカ）
(■) X Corp.: SNSのX (旧Twitter) を運営（アメリカ）
Yahoo! (日本国外): ニュースアグリゲーター、検索エンジンなどを運営（アメリカ）
(■) Zalando: ファッション・美容ECサイトを運営（ドイツ）
(★) 楽天: ショッピングサイト楽天市場などを運営（日本）
5ちゃんねる: 電子掲示板

（■: EUのデジタルサービス法(DSA)に基づき、VLOP/VLOSEに指定された事業者、●: EUのデジタル市場法(DMA)で「ゲートキーパー」に指定された事業者、★: 日本のデジタルプラットフォーム取引透明化法で「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定された事業者）

事業モデルとネットワーク効果

デジタルプラットフォームは、ユーザー数が増えるほど利便性が向上する「ネットワーク効果」が働くという特徴があります。また、代替サービスへの乗り換えが困難な「スイッチングコスト」も高く、ユーザーが特定のプラットフォームに囲い込まれやすい傾向があります。これにより、データが集中し、AI開発に活用されるという流れも生まれています。

デジタルプラットフォームの諸問題

デジタルプラットフォームには、以下のような問題点が指摘されています。

不正競争: 市場での支配的地位の濫用や、新規参入を妨げる行為
組織犯罪: 違法な取引や、犯罪組織の活動にプラットフォームが悪用される
個人情報の取り扱い: データ漏洩や無断利用
権利侵害コンテンツの投稿・拡散: 著作権侵害や名誉毀損、不適切なコンテンツの拡散
未成年者保護: 未成年者に有害なコンテンツの閲覧や、ネットいじめなどの問題
偽情報と詐欺・詐取: 生成AIやボットを悪用した詐欺広告や、ディープフェイクの拡散
環境負荷: データセンターの電力・水消費による環境への影響

これらの問題に対処するため、各国・地域ではデジタルプラットフォーム事業者への法的規制を整備・強化しています。

各国・地域の法制度と規制

デジタルプラットフォーム事業者は、各国・地域の競争法、個人情報保護法、著作権法、人格権関連法、偽情報拡散防止法など、様々な法律の影響を受けます。以下に、主な国・地域における法制度を紹介します。

欧州連合 (EU)

一般データ保護規則 (GDPR): 個人情報の収集・利用を規制し、EU域外への移転を制限
デジタル市場法 (DMA): 不正競争を防止し、ゲートキーパーの行動を規制
デジタルサービス法 (DSA): 違法コンテンツの排除、広告の透明性を義務付け
AI法 (AIA): AIのリスクに応じて管理・抑制を義務付け
DSM著作権指令: ニュースアグリゲーターへの利益分配、違法コンテンツの削除手続きを規定

イギリス

2018年データ保護法: EUのGDPRに沿ったデータ保護法
チルドレンズコード: 子どもの利用するデジタルプラットフォームに対する行動規範

アメリカ合衆国

児童オンラインプライバシー保護法 (COPPA): 13歳未満の児童の個人情報保護
カリフォルニア州消費者プライバシー法 (CCPA): 包括的な個人情報保護法
カリフォルニア州年齢に適した設計規範法: 13歳から18歳未満の青少年も対象とした保護規定

日本

デジタルプラットフォーム取引透明化法: 特定デジタルプラットフォーム事業者を規制
個人情報保護法: 個人データの収集・利用、第三者提供などを規制
特定商取引法: 不適正な勧誘・取引を規制

中国

独占禁止法: 市場における優越的地位の濫用を規制
中国サイバーセキュリティ法: サイバーセキュリティを強化
中国データセキュリティ法: データ取扱時の履行義務を規定
個人情報保護法: 個人の嗜好などを分析した差別的価格設定を規制

ブラジル

一般データ保護法 (LGPD): EUのGDPRや米国CCPAに類似したデータ規制法

まとめ

デジタルプラットフォームは、私たちの生活に不可欠な存在である一方で、多くの課題も抱えています。各国・地域では、これらの課題に対処するため、法制度を整備し、事業者の規制を強化しています。今後も、デジタルプラットフォームの進化とともに、その規制のあり方が注目されるでしょう。

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