デッドマンズ・ハンド

「デッドマンズ・ハンド」とは、ポーカーにおける特別な手札の組み合わせを指す言葉です。特に、西部開拓時代の有名なガンマン、ワイルド・ビル・ヒコックが暗殺された際に持っていたとされる手札として知られています。この手札は、その不吉な名前と相まって、多くの伝説や憶測を生み出してきました。

デッドマンズ・ハンドの変遷

「デッドマンズ・ハンド」という言葉自体は19世紀末から20世紀初頭には登場していましたが、その具体的な組み合わせは時代や情報源によって異なっていました。初期の記録では、1886年に3枚のジャックと2枚の10のフルハウスが「デッドマンズ・ハンド」とされていました。また、1903年の百科事典では、ジャックと7の組み合わせがそう呼ばれていました。さらに1907年には、ジャックと8の組み合わせが紹介されています。これらの記録から、特定の組み合わせが固定されるまでには、様々な変遷があったことがわかります。

ヒコックの最後の手札

今日の「デッドマンズ・ハンド」が広く知られるようになったのは、1876年8月2日に起こったワイルド・ビル・ヒコックの暗殺事件に起因します。当時、ヒコックはダコタ準州デッドウッドの酒場でポーカーをプレイ中、背後から撃たれて命を落としました。伝えられるところによると、彼がその時持っていたのが、黒いスートのエースと8のペアだったとされています。この出来事以降、「デッドマンズ・ハンド」は不吉な運命を象徴する手札として広く認識されるようになりました。

組み合わせの多様性と5枚目のカードの謎

ヒコックの最後の手札の組み合わせについては、様々な証言や記録が存在します。歴史家のカール・W・ブレイハンによると、ヒコックのカードは、事件後に床から拾い集められ、息子へと受け継がれたそうです。その組み合わせは、ダイヤのエース、クラブのエース、クラブの8、スペードの8、そして血痕のついたハートのクイーンだったとされています。一方、ヒコックの伝記作家であるジョセフ・ロサは、スペードのエース、クラブのエース、2枚の黒の8、そしてクラブのクイーンが5枚目のカードであると述べています。しかし、ロサ自身も、この組み合わせが当時の記録に基づいているわけではないと認めています。

また、5枚目のカードについては、様々な説があります。ヒコックがカードを捨てた、あるいは銃撃によってドローが妨害されたため、5枚目のカードを受け取っていなかったという説も存在します。実際、デッドウッドの復元されたサルーンでは、ダイヤの9を5枚目のカードとして展示しており、他の施設ではダイヤのジャックやダイヤの5を展示しているところもあります。

デッドマンズ・ハンドの遺産

「デッドマンズ・ハンド」は、単なるポーカーの手札の組み合わせを超えて、不吉な運命や死を象徴する言葉として、広く知られるようになりました。ラスベガス・メトロポリタン警察署の殺人課やアメリカ陸軍検視部では、この手札を記章として用いています。また、大衆文化においても、様々な形で「デッドマンズ・ハンド」が登場します。例えば、トレーディングカードゲーム「ドゥームタウン」では、最高のカードとしてダイヤのジャックが5枚目のカードとして採用されています。このように、「デッドマンズ・ハンド」は、単なるポーカー用語を超え、様々な領域でその影響力を発揮しています。

この手札にまつわる多くの伝説と謎が、「デッドマンズ・ハンド」をより魅力的なものにしていると言えるでしょう。

もう一度検索