デメトリオス1世ソテル

デメトリオス1世ソテルは、紀元前187年頃に生まれ、紀元前150年6月に亡くなったセレウコス朝シリアの第10代王です。彼の治世は、紀元前162年から紀元前150年までの約12年間でした。

生い立ちと王位簒奪

デメトリオス1世は、セレウコス4世とその妃ラオディケ4世の間に生まれた三男でした。幼少期に人質としてローマに送られたため、父王の死後、すぐに王位に就くことができませんでした。代わりに、叔父であるアンティオコス4世が王位を継承しました。しかし、デメトリオス1世は王位を諦めず、紀元前162年、歴史家ポリュビオスの支援を受けてローマから脱出、シリアに戻りました。アンティオコス4世の死後、ローマ元老院の支持を得て王位に就いていた従兄弟のアンティオコス5世とその摂政リュシアスを処刑し、ついに王位を奪取しました。

治世と領土拡大

王位を確立したデメトリオス1世は、まずメディアのサトラップであったティマルコスを討伐しました。ティマルコスは王を僭称し独立を宣言していましたが、デメトリオス1世によってその野望は打ち砕かれました。さらに、デメトリオス1世はバビロニア人をティマルコスの専制から解放したことから、「ソテル」（救世主）の称号を贈られました。カッパドキアの王アリアラテス5世も打ち破り、マカバイ戦争ではユダ・マカバイを戦死に追い込み、シリアを自らの支配下に統一することに成功しました。彼の妃ラオディケは、全血姉妹であるラオディケ5世である可能性が指摘されています。

最期と評価

紀元前150年、アンティオコス4世の財務長官であったヘラクレイデスが、アンティオコス4世の子と称するアレクサンドロス・バラスを擁立し、ローマ元老院の支持を得て挙兵しました。デメトリオス1世は反乱軍との戦いに敗れ、殺害されました。彼の死は、セレウコス朝の衰退を象徴する出来事として歴史に刻まれました。

デメトリオス1世は、その生涯を通して、権力闘争と激しい戦いに身を置きました。ローマでの人質生活から王位簒奪、領土拡大に至るまで、彼の人生は波乱に満ちていました。彼は「救世主」としてバビロニア人に崇められましたが、最後は反乱軍に倒れるという悲劇的な最期を迎えました。彼の治世は、セレウコス朝の歴史において、重要な転換期であったと言えるでしょう。

参考資料

Richard R. Losch (2008-5-13). All the People in the Bible: An A-Z Guide to the Saints, Scoundrels, and Other Characters in Scripture. Wm. B. Eerdmans Publishing. ISBN 978-0802824547
M. Rahim Shayegan (2011-9-15). Arsacids and Sasanians: Political Ideology in Post-Hellenistic and Late Antique Persia. Cambridge University Press. ISBN 978-0521766418

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