デュッラキウムの戦い

デュッラキウムの戦い：ポンペイウス、カエサルを破る

紀元前48年7月10日、デュッラキウム（現在のアルバニア、ドゥラス）において、共和政ローマ末期の内戦における重要な戦い、デュッラキウムの戦いが勃発しました。この戦いは、グナエウス・ポンペイウス率いる元老院派と、ガイウス・ユリウス・カエサル率いるカエサル派との間で繰り広げられました。

戦いの背景

ヒスパニアでの戦いを終えたカエサルは、ポンペイウスを追撃すべくアドリア海を渡り、紀元前48年1月4日にギリシャへ上陸。オリクムとアポロニアを占拠し、勢力を拡大しました。一方、ポンペイウス軍は兵力ではカエサル軍を上回っていたものの、その多くは新兵で構成されていました。しかし、ポンペイウス軍は騎兵に優れ、兵糧も豊富であり、カエサル軍を優位に立っていました。

戦いの経過

カエサルは、デュッラキウムに本拠を置くポンペイウス軍に対し、塹壕と城壁を組み合わせた包囲陣地を構築。これは、騎兵の機動力を封じ、兵力で勝るポンペイウス軍の補給を断つことを目的とした戦略でした。しかし、ポンペイウスもこれに対抗し、丘を占領して防壁を築き、カエサル軍を牽制しました。

さらに、ポンペイウス軍は制海権を握り、海からの補給路を確保。これにより、カエサル軍の補給を断つという目論見は失敗に終わりました。加えて、カエサル軍が構築していた包囲陣地は南側が未完成であり、そこが弱点となっていました。ポンペイウス軍は、この弱点を突いて猛攻を仕掛け、カエサル軍は総崩れとなりました。兵士たちは遁走し、カエサル軍は32本の軍旗を奪われるという大敗北を喫しました。

カエサル自身も命を落としかけるほどの危機に瀕しましたが、ポンペイウスはカエサル軍の敗走があまりにも徹底していたため、伏兵の存在を疑い、追撃を中止しました。この判断が、結果的にカエサルに反撃の機会を与えることになります。カエサルは後に、「もしあのとき、敵軍の誰か1人でもそう望んだなら、今日勝利は彼らのものであった」と語っています。

戦いの後

カエサルはテッサリアへと撤退し、ポンペイウスは追撃を開始します。当初、ポンペイウスは慎重な姿勢を崩しませんでしたが、ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブスやルキウス・アフラニウスといった、カエサルに敵対する強硬派からの突き上げを受け、追撃を断行。これが、古代ローマ最大の激戦とも称されるファルサルスの戦いへと繋がっていきます。

デュッラキウムの戦いは、ポンペイウスがカエサルを破った数少ない戦いの一つとして、歴史に名を刻んでいます。しかし、この勝利は決定的なものではなく、その後のファルサルスの戦いでの敗北へと繋がる、一つの転換点となりました。

『デュラキウムの戦い』 - コトバンク

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