デュピュイ・ド・ローム (装甲巡洋艦)

デュピュイ・ド・ローム

デュピュイ・ド・ローム (Armored Croiseur Dupuy de Lôme) は、フランスが誇る世界初の装甲巡洋艦です。この艦は、造船提督ルイス・マリー・アンヌ・ド・ビュシィの設計により、同時代の前弩級戦艦「マッセナ」をコンパクトにし、装甲を削減してその代わりにスピードを向上させたものです。この設計は、当時のフランス海軍の主流を占めていた青年学派の戦略思想を反映しています。艦名は、蒸気推進の初期型装甲艦「ラ・グロワール」を作り出したアンリ・デュピュイ・ド・ロームに由来します。

概要

装甲巡洋艦とは、従来の防護巡洋艦に対抗するため、舷側水線部に垂直装甲を追加した艦種です。湾曲した水線下装甲だけでは、高速かつ強力な弾丸や速射砲の攻撃を防ぎきれないと判断されたためです。

艦形について

この艦の船体形状は、フランス海軍が多くの艦艇に採用していたタンブル・ホーム型を特徴としています。この設計は、水線以下の構造を曲線で絞り込むことで、艦体の重量を軽減するメリットがあります。艦首や艦尾は水線下で特に突出しており、これにより航行時の水流を効率よく利用でき、船体面積を圧縮し射界を広げることが可能です。艦首には「プラウ・バウ」という特徴的な形状があり、象徴的なデザインです。

兵装

デュピュイ・ド・ロームは、艦首に19.4cmの単装主砲塔を1基、艦橋に立つミリタリーマストには4.7cmの機関砲が配置されています。このミリタリーマストは、敵の水雷艇攻撃を迎撃するために設計されており、当時の主力艦にとって必要不可欠な装備でした。さらに、艦橋の左右には副砲として16.3cmの単装砲塔が3基ずつ配置されています。

機関

本艦は、当時の基準において非常に優れた19.7ノットの速度を誇り、三軸推進方式を採用した最初の大型軍艦として知られています。主機関には高出力の三段膨張型三気筒レシプロ機関が用いられ、運用に応じた効率的な推進が可能です。

防御

舷側には100mmの厚さの装甲が施され、甲板から水線面まで4m、さらには水線下1.1mを広範囲にカバーします。防御が重視され、主甲板には20mm装甲が施され、その背後には弾片からの防御を強化するための仕組みがあります。

艦歴

デュピュイ・ド・ロームは1888年7月4日に起工され、1895年5月15日に就役しました。早速、重要行事に参加し、フランスを代表する艦艇としての役割を果たしました。その後、数度の改装を経て1910年に退役します。

艦は後にペルー艦隊に引き渡され、装甲巡洋艦として「Commandante Aguirre」という新しい名前を付けられました。その後、この艦は戦争に巻き込まれ、最終的には商船としての運命を辿ることになります。1918年には商船に改造され「Peruvier」となり、1923年には解体される運命となりました。

デュピュイ・ド・ロームは、その革新的な設計と運用で近代艦艇の発展に寄与した重要な艦でした。

もう一度検索