デューシズ・ワイルド

『デューシズ・ワイルド』

1997年に世に送り出された『デューシズ・ワイルド』は、ブルース界の伝説、B.B.キングが発表したスタジオ・アルバムです。彼の膨大な作品群の中でも特に異彩を放つ本作は、キングのキャリアにおける新たな地平を切り開きました。

このアルバム最大の特色は、参加アーティストの顔ぶれの豪華さとその多様性にあります。ブルースの枠を超え、ロック、R&B、ヒップホップ、カントリーなど、様々なジャンルで活躍する第一級のミュージシャンたちが、キングのブルースに新たな息吹を吹き込んでいます。エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズ、ボニー・レイット、ウィリー・ネルソン、ヴァン・モリソン、トレイシー・チャップマン、ディアンジェロ、ヘヴィ・Dといった、世代もジャンルも異なるアーティストたちとの共演は、ブルースが持つ普遍的な魅力を改めて証明するとともに、キングの音楽が持つ柔軟性と包容力を示しています。特に、ロック界のレジェンドであるエリック・クラプトンとの「ロック・ミー・ベイビー」での共演は話題を呼び、その後、二人は2000年に連名アルバム『ライディング・ウィズ・ザ・キング』を制作することにも繋がりました。

商業的な成功も、『デューシズ・ワイルド』を語る上で欠かせない要素です。本作は、B.B.キングのアルバムとしては異例とも言えるほどの売上を記録しました。母国アメリカでは、主要な総合チャートであるBillboard 200でトップ100入りを果たし、これは1976年のライブアルバム以来、実に21年ぶりの快挙でした。さらに、ビルボードのブルース・アルバム・チャートでは堂々の1位を獲得するなど、本国での根強い人気と本作への高い評価を示しました。国際的にも成功を収めており、ノルウェーのアルバム・チャートでは17年ぶりにトップ40入りを達成。ニュージーランドでは7週連続でトップ20圏内に留まり、そのうち2週はトップ10入りを果たすなど、世界各地で熱狂的に受け入れられました。

アルバムには全17曲が収録されており、それぞれが参加ゲストとの刺激的なコラボレーションによって彩られています。インターナショナル盤には、ヴァン・モリソンとの「イフ・ユー・ラヴ・ミー」、ローリング・ストーンズとの「ペイング・ザ・コスト・トゥ・ビー・ザ・ボス」、ポール・キャラックとの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」、そしてズッケロとの「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」の4曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

以下に収録曲の一部と参加ゲストを挙げます。

「イフ・ユー・ラヴ・ミー」 - ヴァン・モリソン
「ザ・スリル・イズ・ゴーン」 - トレイシー・チャップマン
「ロック・ミー・ベイビー」 - エリック・クラプトン
「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」 - ミック・ハックネル
「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」 - ボニー・レイット
「エイント・ノーバディ・ホーム」 - ディアンジェロ
「ポーリーズ・バースデイ・ブギ」 - ジュールス・ホランド
「ゼア・マスト・ビー・ア・ベター・ワールド・サムホエア」 - ドクター・ジョン
「コンフェッシン・ザ・ブルース」 - マーティ・スチュアート
「ハミングバード」 - ディオンヌ・ワーウィック
「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」 - ポール・キャラック
「ペイング・ザ・コスト・トゥ・ビー・ザ・ボス」 - ローリング・ストーンズ
「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」 - ズッケロ
「デンジャラス・ムード」 - ジョー・コッカー
「キープ・イット・カミング」 - ヘヴィ・D
「クライン・ウォント・ヘルプ・ユー」 - デヴィッド・ギルモア & ポール・キャラック
* 「ナイト・ライフ」 - ウィリー・ネルソン

『デューシズ・ワイルド』は、B.B.キングが自身の音楽性を維持しつつ、多様な音楽ジャンルとの橋渡しを成功させた稀有な作品と言えるでしょう。偉大なブルースマンが、様々な世代やスタイルのアーティストたちと交わることで生まれた化学反応は、多くのリスナーに新鮮な驚きと感動を与え、彼のキャリア後期の代表作として今なお語り継がれています。このアルバムは、ブルースという音楽がいかに普遍的で、他のジャンルとの融合によってさらなる可能性を広げられるかを示す好例であり、B.B.キングの尽きることのない探求心と、彼が持つ音楽界での尊敬の厚さを物語っています。

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