デルコ・エレクトロニクス

デルコ・エレクトロニクス：自動車電子機器のパイオニア

デルコ・エレクトロニクス・コーポレーションは、1909年に米国オハイオ州デイトンで創業した電子機器の開発・製造会社です。その歴史は、自動車産業の黎明期から密接に関わり、数々の革新的な技術を生み出してきました。

デルコの誕生

デルコ（DELCO）という名称は、当初は前身である「Dayton Engineering Laboratories Co.」の略称でした。この会社は、電動キャッシュレジスターを発明したチャールズ・ケタリングと、彼の上司であったエドワード・A・ディーズによって設立されました。

独立企業時代の革新

デルコは独立企業時代に、自動車の電子機器分野で数々の画期的な発明を成し遂げました。

セルフスターター
最も有名な発明の一つが、世界初の自動車用セルフスターターです。それまでクランク棒を使用していたエンジンの始動を、より安全で容易なものに変えました。1912年にキャデラックに初めて搭載され、1914年には世界の自動車の9割がデルコのセルフスターターを採用するまでになりました。

バッテリー・イグニッション・システム
1910年には、世界初となる信頼性の高いバッテリー・イグニッション・システムを開発しました。これは、コイルとバッテリーを使用するもので、特に高価であったボッシュのマグネット点火装置に代わるものとして、アメリカで広く普及しました。

* 航空機用イグニッション・システム
第一次世界大戦中には、航空機用リバティエンジンのイグニッション・システムを開発・改良しました。また、世界初の航空機用合成燃料の開発にも携わっています。

GM傘下へ

1920年、デルコはゼネラルモーターズ（GM）に売却されました。ケタリングはGMの研究子会社の副社長に就任し、デルコは1926年にレミー・エレクトリックと合併して「デルコ＝レミー」となりました。その後も、デルコは自動車電子機器の分野で重要な役割を果たし、1936年にはダッシュボードに装備するカーラジオを最初に生産した会社の一つとなりました。1970年代には自動車電子機器の主要サプライヤーとなり、ピーク時には3万人もの従業員を抱えていました。

GMの防衛研究部門である「ゼネラルモーターズ・ディフェンス・リサーチ・ラボラトリーズ」は、後にデルコ・エレクトロニクス傘下となり「デルコ・システムズ・オペレーションズ」と改称しました。

1985年、GMがヒューズ・エアクラフト社を買収した際に、デルコ・エレクトロニクスは同社と合併し、「ゼネラルモーターズ・ヒューズ・エレクトロニクス・コーポレーション（GMHE）」となりました。GMHEは、デルコ・エレクトロニクス事業部、ヒューズ・エアクラフト・カンパニー、ヒューズ・スペース・アンド・コミュニケーションズ・カンパニー、ヒューズ・ネットワーク・システムズ・インクなどで構成されていました。

1997年、デルコ・エレクトロニクスの商用事業部門はGM傘下のデルファイ・オートモーティブ・システムズに移管され、GMHEの防衛事業部門はレイセオンに売却されました。デルファイは1999年に独立企業として株式を公開しました。

デルコブランドの現在

デルコ・エレクトロニクス自体は会社としては存在しませんが、GMはデルコの名前とその使用権利を保持しており、ACデルコなどの子会社で使用しています。

デルコは、自動車産業の発展に大きく貢献した企業であり、その技術とブランドは現在も生き続けています。

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