デンマーク国民党

デンマーク国民党：台頭を極めた反移民政党の現在

デンマーク国民党(Dansk Folkeparti)は、1995年に進歩党(Fremskridtspartiet)からの離党組によって結成されたデンマークの政党です。元介護士のピア・クラスゴー(Pia Kjærsgaard)が創設者として知られ、現在もデンマーク政界で大きな存在感を示しています。

当初は、極右政党からの分裂を背景に誕生したデンマーク国民党でしたが、創設者クラスゴーの過激な発言や政策によって、急速に支持を拡大しました。クラスゴーは「ムスリムのヨーロッパ侵入」や「ヨーロッパ人の民族浄化」といった挑発的な発言を繰り返しており、大きな物議を醸しています。しかし、これらの発言に共感を示す国民も少なくなく、特に高齢者層や若年層からの支持を集めていました。

コペンハーゲン首都圏では左派勢力が強いことから支持基盤は弱かったものの、コペンハーゲン郊外やユトランド半島の中部・西部では、保守党を凌ぐ勢力を誇り、ヴェンスタに次ぐ規模の支持を獲得していました。

デンマーク国民党は、長らく与党に閣外協力の形で参加し、その影響力を示してきました。この期間、移民・難民審査は厳格化され、事実上新規移民は困難な状況になりました。さらに、同党はデンマーク刑法における「人種差別発言の禁止」条項の廃止も要求するなど、その政策は常に議論の的となっていました。

2007年の総選挙では25議席を獲得し、勢力を拡大。続く2009年の欧州連合議会選挙では議席数を倍増させ、デンマークの政党の中で最も得票率を伸ばしました。しかし、極右政党とみなされたため、欧州議会の保守グループへの入会をイギリス保守党から拒否されるという出来事もありました。

その後もフォルケティング（国会）で30議席前後を維持していましたが、2019年の総選挙では16議席に減少。さらに2022年には、新たに設立されたデンマーク民主党へ多くの党員・支持者が流出し、党勢は大きく後退しました。同年に行われた総選挙では、わずか5議席しか獲得できませんでした。

デンマーク国民党は、反移民、反多民族国家、非白人移民の国外追放、老人政策の強化、反イスラム主義、EUへの批判的姿勢、ユーロ導入反対、トルコのEU加盟反対、グリーンランド独立反対、コソボ独立反対、台湾支持、テロとの戦い支持などを主な政策として掲げてきました。

若年層をターゲットにした下部組織「デンマーク国民党青年部」の存在も注目に値します。同青年部は、外国人に反感を持つ若者を中心に構成され、党の将来にとって重要な役割を担っていました。

かつてはデンマーク政界で大きな影響力を持っていたデンマーク国民党ですが、近年の支持率低迷は、その政策や発言、そして政界における勢力図の変化を反映していると言えるでしょう。今後の動向が注目されます。

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