デヴィッド・ボウイ (アルバム)

デヴィッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイ名義で発表された、自身のキャリアにおいて最初のスタジオアルバムです。1967年6月1日に、デッカ・レコード傘下のデラム・レコードよりリリースされました。このアルバムは、しばしばそのプロモーションのために制作された映像作品と同名の「Love You Till Tuesday」の別名でも知られています。

背景と評価

新たな活動の場を求めていたデヴィッド・ボウイは、1966年12月にデラム・レコードと契約を結びました。当時のデラムは、従来の枠にとらわれない実験的なロック音楽に力を入れ始めていたレーベルです。ボウイは契約後、このアルバムに先行する形で1966年12月と1967年4月に2枚のシングルを発表しました。そして、セカンドシングルから約2ヶ月後の1967年6月に、満を持してこのデビューアルバムを世に送り出したのです。アルバム発売後も、翌月にはサードシングルがリリースされましたが、これらの初期作品はいずれも商業的な成功を収めるには至りませんでした。

アルバム自体も同様に、発売当初は商業的に振るわず、当時の音楽業界に存在した「シングルを数枚出してもヒットしなければ契約解除」という厳しい慣習の前に、ボウイはデラム・レコードとの短い契約期間を終えることとなりました。

本作は全体的に丁寧に作られた作品ではあったものの、当時の音楽シーンにおいて強いインパクトを与えるほどの革新性や突出した要素に欠けていたためか、発売当時は大きな話題とはなりませんでした。また、このアルバムに収録された楽曲が、その後の輝かしいキャリアの中でライブで演奏される機会は極めて少なく、彼の過去作品が再リリースされる際にも、長らくその対象から外されていた時期があるほどです。

制作過程

アルバムの制作は、デッカ・レコード傘下のパーダ・レーベルを率い、フリートウッド・マックやジョン・メイオールといったアーティストを手がけたマイク・ヴァーノンがプロデューサーを担当しました。レコーディング・エンジニアには、ヴァーノンの助手であり、後にエルトン・ジョンの成功を支えることになるガス・ダッジョンが起用されています。

本作のためのレコーディング・セッションは、1966年11月から1967年2月にかけての期間に、合計8日間行われました。このセッションでは合計17曲が録音され、そのうち6日分のセッションで録音された14曲がアルバム本編に収録されました。残りの音源は、シングル曲などに用いられています。

音楽スタイル

当時のボウイのマネージャーであったケネス・ピットは、イギリスで大きな注目を集めていたボブ・ディランのようなフォークシンガーのイメージでボウイを売り出すことを構想していました。このため、ボウイにはシンガーソングライターとしてのスタイルが求められました。アルバムに収録された全楽曲は、ボウイ自身による作詞・作曲です。しかしながら、マネージャーが意図したフォーク路線というよりは、オーケストレーションなどを取り入れた、よりポップでメロディアスなサウンドが特徴となっています。

本作には、先行シングルとして発表された「ラバー・バンド」や、後にシングルカットされた「愛は火曜日まで」がアルバムバージョンで収録されていますが、これらの多くはシングルとは異なるアレンジやテイクが採用されています。「墓掘り人」も新たに録り直されたバージョンが用いられているなど、バージョン違いが存在する楽曲が複数含まれている点も特徴の一つです。

その後の展開

オリジナル盤は1967年6月1日にLPレコードとしてリリースされました。商業的には成功しなかったものの、本作は後に再リリースの機会を得ることになります。1997年にはデッカ・レコードから、デラム時代の音源を網羅した編集盤『David Bowie: The Deram Anthology 1966-68』が発売されました。さらに、2010年2月24日にはユニバーサル・レコードより、当時の未発表音源などを加えた2枚組の「デラックス・エディション」が登場しています。

関連映像作品

当時のマネージャー、ケネス・ピットの発案は音楽制作に留まらず、本作の楽曲をフィーチャーしたフィルム作品『Love You Till Tuesday』の制作にも及びました。このフィルムのためにサウンドトラック・アルバムも制作されており、後年の代表曲となる「スペイス・オディティ」の初期バージョンが収録されている点も特筆されます。

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