デ・ハビランド ジャイロン

デ・ハビランド PS.23 ジャイロン

デ・ハビランド PS.23またはPS.52ジャイロンは、航空エンジンの一種で、1950年代にフランク・ハルフォードによって設計されました。最初はハルフォード H-4として知られ、彼が手がけた最後のターボジェットエンジンとなりました。このエンジンは、当時の技術水準において非常に高出力であり、推力は20,000 lbf（約89 kN）で、アフターバーナーを使用することで27,000 lbf（約120 kN）まで増加しました。しかし、その巨大なサイズが障害となり、実運用には至りませんでした。

設計と開発の背景

ジャイロンは、デ・ハビランドがそれまでに開発してきた遠心式ターボジェットエンジン、特にデ・ハビランド ゴブリン（H-1）やデ・ハビランド ゴースト（H-2）を進化させる形で設計されました。ジャイロン自体は、軸流式エンジンとして初めての試みであり、さらに超音速航空機用に特化したエンジンでもありました。
最初の試運転は1953年9月に行われ、飛行試験は1955年からショート スペリン試験機を用いて実施されました。この試験機は、元々ロールス・ロイス エイヴォンターボジェットエンジンを二基装備しており、下部のエンジンをジャイロンに置き換える形で進められました。この際の推力は18,000 lbf（約80 kN）で、後の試験では公式に推力15,000 lbf（約67 kN）とされ、アフターバーナー使用時には推力が20,000 lbfに達しました。さらに進化したタイプでは25,000 lbfに増加しました。

運用計画と中止

ジャイロンは複数の航空機プロジェクトでの使用が検討されましたが、その中で特に注目されたのはホーカー ハンターを置換する予定だったHawker P.1121超音速戦闘機でした。しかし、この計画は最終的に中止され、他にも運用要求F.155に基づいた計画もありましたが、こちらも1957年の防衛白書によって取り消されました。最終的にイギリス政府は1957年3月にジャイロンの開発を中止し、そのプロジェクトに要した費用は340万ポンドに達しました。

展示情報

現在、デ・ハビランドジャイロンは、ロンドンのサイエンス・ミュージアムに展示されており、またデ・ハビランド航空博物館でも見学することができます。これは、航空史における重要な技術の一部を示す貴重なアイテムとなっています。

ジャイロンの技術仕様

以下は、デ・ハビランド ジャイロン D.Gy.1の主な仕様です。

• - 形式: ターボジェット
• - 全長: 3.95 m
• - 直径: 1.40 m
• - 乾燥重量: 1,921 kg

構成要素

• - 圧縮機: 7段軸流式
• - タービン: 2段

性能

• - 推力: 89 kN（9,072 kgf、20,000 lb）
• - 全圧縮比: 5.6
• - 燃料消費率: 1.04 lb/hr/lb（フルスロットル時）
• - 推力重量比: 46.3 N/kg

デ・ハビランドジャイロンは、その革新的な設計と技術の挑戦によって、航空機エンジン開発の重要なマイルストーンとなりました。

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