デ・ハビランド DH.82 タイガー・モス

デ・ハビランド DH.82 タイガー・モス

デ・ハビランド DH.82 タイガー・モスは、イギリスの航空機メーカーであるデ・ハビランド社が製造した練習機です。この機体の愛称「タイガー・モス」は、「ヒトリガ」という意味を持ちます。1931年の初飛行以来、これが初心者向けの飛行訓練機として広く知られるようになりました。

機体の設計と開発

タイガー・モスは、1920年代に多く使用されたDH.60 モスシリーズの軍用版として設計されました。最初はDH.60T モス・トレーナーという名前で呼ばれ、全木製の複葉機として特長的な外観を有していました。外観はモスと似ていますが、前席の囲い部分を前方に移動させることで、乗員が容易に脱出できるよう改良されています。このデザイン変更により、上翼の後退角が浅く変更され、エンジンカウリングも改善されて視界が向上しました。また、固定式の降着装置は、フロートやスキーに交換することも可能です。

使用と生産

1931年に正式に採用されたタイガー・モスは、初等練習機として多くの飛行学校だけでなく、イギリス軍でも使用されました。海外に広く輸出され、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは生産され、またノルウェー、ポルトガル、スウェーデンではライセンス生産も行われました。第二次世界大戦中、この機体は多くのパイロットを育成し、前線では連絡機としても重宝されました。特にビルマ戦線では、患者輸送のために改造された機体も存在しました。戦後もしばらくの間練習機として扱われ、余剰機体は民間に払い下げられました。現在でも、当時の機体のうち多くが飛行可能な状態で残っています。

派生型の紹介

タイガー・モスにはいくつかの派生型が存在します。以下は主な派生型の一部です。

• - DH.60T モス・トレーナー: 初期の前量産型。
• - DH.82: 最初の量産型で、エンジンにはデ・ハビランド ジプシーIIIを搭載。
• - DH.82A: エンジンをデ・ハビランド ジプシー・メジャーIに変更。
• - DH.82C: カナダ向けの寒冷地仕様。
• - PT-24: アメリカ陸軍による特注版。
• - クイーンビー: 無線操縦が可能な機体。

技術仕様

以下はDH.82Aモデルの基本スペックです:

• - 全長: 7.29 m
• - 全幅: 8.94 m
• - 全高: 2.68 m
• - 空虚重量: 506 kg
• - エンジン: デ・ハビランド ジプシー・メジャーI（130 hp）
• - 最大速度: 175 km/h
• - 航続距離: 486 km
• - 乗員: 2名

このように、デ・ハビランド DH.82 タイガー・モスは、航空業界での重要な練習機としての役割を果たし、多くの地域で機体が生産・運用されました。

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