デーノタメ遺跡

埼玉県北本市に眠る、縄文の記憶：デーノタメ遺跡

デーノタメ遺跡は、埼玉県北本市に位置する、縄文時代から古墳時代にかけての複合遺跡です。特に縄文時代中・後期の集落跡は、関東地方でも最大級の環状集落として知られています。2024年（令和6年）10月11日には、その歴史的価値が認められ、国の史跡に指定されました。

遺跡発見の経緯と概要

遺跡の存在が明らかになったのは、久保特定土地区画整理事業に伴うデーノタメ池の調査がきっかけでした。江川周辺に広がる約4ヘクタールの範囲で発掘調査が行われた結果、縄文時代、弥生時代、古墳時代のものと思われる多数の遺物が発見されました。台地上からは25軒もの竪穴建物跡が見つかっており、集落と水場が一体となって残る珍しい遺跡として注目されています。

遺跡の名前は、かつてこの場所にあった「デーノタメ池」に由来します。池の湧水を「出水（デスイ/デイ）」と呼んでいたこと、または北方の台原地区が「デエッパラ」と呼ばれていたことが、名前の由来になったという説があります。

発掘調査で明らかになったこと

発掘調査によって、当時の人々の生活を知る上で貴重な発見が数多くありました。クリやトチノキなどの木の実、ウルシの木材や花粉、ヒスイ製品、大豆や小豆を埋め込んだ土器、ニワトコやコウゾの種子、ヒメコガネの死骸などが出土しています。特に注目されるのは、6ヶ所から見つかった「クルミ塚」です。これは、クルミの殻をまとめて埋めたもので、当時の食生活や自然環境を知る手がかりとなります。

これらの発見から、集落の住人たちは、食糧を確保するために森林の植生を積極的に改変し、自然と共生しながら生活していたと考えられています。

保存に向けた取り組み

貴重な遺跡を未来へ残すため、北本市は国指定史跡を目指し、遺跡統括報告書を作成しました。また、久保特定土地区画整理事業のエリアから遺跡エリアを除外し、都市計画道路の計画を変更するなど、遺跡の保存に力を入れています。

まとめ

デーノタメ遺跡は、関東地方における縄文時代の集落の様子を知る上で、非常に重要な遺跡です。出土品や遺構は、当時の人々の生活や文化、自然との関わり方を鮮やかに物語っています。今後の調査や研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

参考文献

* 北本市文化財保護課『デーノタメ遺跡総括報告書』北本市〈北本市埋蔵文化財調査報告書第22集〉、2019年9月30日。

もう一度検索