ニワトコ

ニワトコ（接骨木）

ニワトコ（学名: Sambucus racemosa subsp. sieboldiana）は、ガマズミ科ニワトコ属に分類される落葉性の低木、または小高木です。別名としてセッコツボクとも呼ばれ、日本では山菜や民間薬として古くから利用されてきました。

名称の由来

「接骨木」という和名は、この木の枝や幹を煎じて作った水あめ状のものが、骨折治療の際の湿布薬として用いられたことに由来します。中国では「無梗接骨木」と呼ばれ、薬用として利用される接骨木の仲間ですが、中国で接骨木といえば、トウニワトコを指します。

地方によっては、ヤマダズ、タズノキ、ダイノコンゴウなどの方言名で呼ばれることもあります。「山たづ」という呼び名は、万[[葉集]]にも詠まれた古い呼び名で、対生する羽状複葉がツルの羽を広げた姿に似ていることに由来するとされています。また、古くはミヤツコギ（造木）とも呼ばれ、神事に用いられる幣帛の材料として使われていたという説もあります。古事記には「山たづは今の造木なり」という記述も見られます。

分布と生育環境

ニワトコは、日本国内では北海道から九州まで広く分布しており、国外では朝鮮半島や中国にも見られます。主に、暖地の丘陵や山麓、谷間などの林縁に生育し、湿気があって日当たりの良い場所を好みます。古くから栽培もされており、庭木としても親しまれてきました。

特徴

ニワトコは、高さ2〜6mになる落葉広葉樹の低木で、下部からよく枝分かれします。枝は独特な弧を描き、古い樹皮は黒褐色で厚いコルク質を持ち、深いひび割れが入ります。若い枝は緑色から灰褐色で、コルク質が発達すると縦にひび割れます。枝の中には太い白い髄があります。

葉は対生で奇数羽状複葉、長さは8〜30cmになります。小葉は長楕円形から広楕円形で、縁には細鋸歯があります。花は春に淡黄白色の小さな花を多数咲かせ、円錐花序を形成します。花冠は5つに深く裂け、かすかに香りがあります。

果実は、6〜7月頃に赤色から暗赤色に熟す球卵形の核果です。まれに黄色に熟すものもあり、キミノニワトコと呼ばれます。果実の中には3つの種子がありますが、成熟するのは1〜2個です。冬には枝先が枯れることが多く、頂芽は発達しません。

栽培

ニワトコは、実生または挿し木で繁殖させます。定植後は、根元から多くの側芽が生えるため、2〜3本を残して古い枝を剪定します。

利用

ニワトコは、若葉を山菜として食用にするほか、葉や茎を利尿剤として利用したり、材を細工物にしたりするなど、様々な用途で利用されてきました。また、魔除けの木としても知られ、小正月の飾りやアイヌのイナウの材料にも使われました。樹皮や木部を入浴剤にしたり、花や全草を煎じて飲用する習慣も各地にあります。

食用

ニワトコの若葉は山菜として有名で、天ぷらなどで食べられます。採取時期は3〜4月頃が適期です。独特の味と舌触りがあり、滋養強壮によいとされています。ただし、青酸配糖体を含むため、多食は危険です。果実は焼酎に漬け、果実酒の材料としても利用されます。

薬用

葉や枝を乾燥させたものは、民間薬として利用され、利尿、発汗、筋骨挫傷などに効果があるとされています。また、枝を風呂に入れる入浴剤としても使われます。古代エジプトでは、糖尿病の症状である多尿の治療に利用されていたという記録も残っています。

実験材料

枝の髄は、顕微鏡観察の標本を作成する際の支持材として利用されています。特にキノコの同定などで、簡易に組織切片を得る際に重宝されています。

下位分類

ニワトコには、いくつかの下位分類があります。

オオニワトコ：日本海側の多雪地帯に分布。
エゾニワトコ：北海道や本州の高地に分布し、花序に毛状の突起があります。
* セイヨウニワトコ：花に良い香りがあり、赤実と黒実があります。

ニワトコは、小葉の数、形、大きさ、果実の色などに変異が多く、他にも多くの品種が存在します。

ニワトコは、その多様な利用法と文化的な背景から、日本の自然や暮らしに深く根ざした植物と言えるでしょう。

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