トゥクムス

トゥクムス：ラトビアの歴史と発展を語る都市

バルト海に面したラトビア共和国。その中心部からやや内陸に入った位置に、歴史と文化が息づくトゥクムスという都市があります。ヴィゼメ、ゼムガレ、クルゼメの3つの歴史的地域が交わる交通の要衝として、トゥクムスは古くから発展を遂げてきました。

トゥクムスの歴史：交易路から近代都市へ

トゥクムスの歴史は、ダウガワ川とプロシアを結ぶ重要な交易路に沿って発展してきたことに始まります。現在タルシと呼ばれる地域は、トゥクムスの中でも最も古い地区です。1253年以降はリヴォニア帯剣騎士団の支配下に置かれ、13世紀末にはスロチェネ川沿いに石造りの城が築かれました。この城を中心に、ドイツ人の商人や職人たちが集まり、活気あふれる市場が形成されていきました。

16世紀に入ると、プロシアに向かう新たな交易路が開設され、これが現在のリエラ通りです。商業施設や公共施設などがこの通り沿いに集積し、トゥクムスの発展を大きく促進しました。リヴォニア騎士団の解散後、クールラント・ゼムガレン公国が成立しましたが、トゥクムスは幾多の戦乱に見舞われました。しかし、クールラント公ヤーコプ・ケトラーの治世下では好況を迎え、イェルガヴァへの交易路が整備され、近郊の湖にはダムが建設されました。このダムでは製粉所や樽製造工房が稼働し、樽は海外へ輸出されるなど、経済活動が盛んに行われていました。当時の人口は800人ほどで、町のシンボルとして湖と1687年に建てられた教会の尖塔が人々の生活に彩りを添えていました。

1795年以降、クールラントはロシア帝国に併合されます。エカチェリーナ2世は、トゥクムスを含む複数の都市に市民権を付与するため、クールラント地方の分割を行いました。1800年には都市の境界が定められ、2年後には最初の都市地図が作成されました。人口は1500人を超え、1806年には初等学校が開校するなど、教育にも力を入れるようになりました。1860年には道路の舗装、1875年には街灯の設置が完了し、都市基盤整備が進みました。1877年にはリガとトゥクムスを結ぶ鉄道が開通し、その後ヴェンツピルスへの路線も開通しました。鉄道の開通により、大都市との接続が強化され、トゥクムスの発展はさらに加速しました。1897年には24の企業が操業し、革製品、繊維製品、陶磁器、食料品など多様な製品が生産されていました。

産業の発展とともに町は拡大しましたが、裕福な住民が東部に、労働者階級が西部に住むという傾向があり、都市は東西の2つの地区に分かれて発展していきました。1930年代には人口8000人、73の企業が操業するまでに成長しました。

トゥクムスの史跡：歴史を語る建造物

トゥクムスには、歴史を物語る貴重な史跡が数多く残されています。1301年築造の、ラトビア唯一現存するリヴォニア時代の城であるヤウンピルス城はその代表的なものです。城の近くには、トゥクムスの歴史を専門とする博物館と展示ホールがあり、1592年築のヤウンピルスルーテル教会も現存しています。また、トゥクムスから5km離れたクルゼメ地方の丘陵地帯には、1901年にリガ市長ジョージ・アームステッドの別荘として建てられたヤウンモク宮殿があります。現在は林業に関する展示が行われています。

著名な出身者

トゥクムスは、1980年モスクワオリンピックで金メダルを獲得した陸上選手、ダイニス・クラを輩出しています。

まとめ

交易路の要衝として栄え、幾多の歴史的変遷を乗り越えてきたトゥクムス。冷戦期には空軍基地が置かれ、現代では豊かな歴史と文化を背景に、独自の進化を遂げている都市です。その歴史的建造物や、近代的な都市開発の様子は、ラトビアの歴史と発展を深く理解する上で、重要な視点を提供してくれるでしょう。

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