トゥチャ族

トゥチャ族：中国南西部の少数民族

中国南西部に暮らすトゥチャ族は、中華人民共和国が認める55の少数民族の一つです。湖南省、湖北省、重慶市（旧四川省）の三省・直轄市にまたがる地域に居住し、総人口は約800万人に及びます。中国の少数民族の中では8番目に人口の多い民族ですが、その文化的現状は複雑で、大きな課題を抱えています。

言語と文化の現状

トゥチャ語はチベット・ビルマ語派に属する言語ですが、長年にわたる漢族との交流により、現在では母語話者は約10万人程度と推定されています。これは総人口のわずか1%強であり、民族全体の言語の伝承が危機に瀕している状況と言えます。 満州族やシェ族と同様に、母語話者の割合が極端に少ない民族の一つとして挙げられます。ほとんどのトゥチャ族の人々は中国語を母語としています。

トゥチャ族は、独自の伝統や文化、習慣を持っていますが、急速な現代化と中国語の普及により、それらの継承が脅かされています。伝統的な生活様式、音楽、踊り、信仰などが、徐々に失われつつある現実があります。

トゥチャ族の居住地域

トゥチャ族の人々は、主に湖南省と湖北省、重慶市に集中して居住しています。これらの地域には、トゥチャ族の自治州、自治県、民族郷が数多く設置されており、民族の自治と文化の保護に努めています。具体的には、以下の自治体などが存在します。

自治州
湖北省：恩施トゥチャ族ミャオ族自治州
湖南省：湘西トゥチャ族ミャオ族自治州

自治県
湖北省：長陽トゥチャ族自治県、五峰トゥチャ族自治県
重慶市：石柱トゥチャ族自治県、彭水ミャオ族トゥチャ族自治県、秀山トゥチャ族ミャオ族自治県、酉陽トゥチャ族ミャオ族自治県
* 貴州省：沿河トゥチャ族自治県、印江トゥチャ族ミャオ族自治県

民族郷
上記以外にも、多くの民族郷が存在します。これらは、トゥチャ族の人々が多数を占める地域に設置され、地域社会の維持に重要な役割を果たしています。

民族名について

「土家」という呼び名からも分かるように、「家」には「族」の意味合いが含まれています。そのため「土家族」という名称は、重複した表現となります。しかし、西北部に居住するモンゴル系民族である「土族」と区別するために、現在では「土家族」という名称が正式な民族名として用いられています。

トゥチャ族の氏族

トゥチャ族には、彭、田、覃、譚、冉などの姓が多いことが知られています。これらの姓を持つ人々は、トゥチャ族社会の中で重要な役割を果たしてきた歴史があります。

著名なトゥチャ族の人々

トゥチャ族出身の著名人には、軍人、外交官、芸術家、モデル、女優、歌手など、様々な分野で活躍する人々がいます。彼らの成功は、トゥチャ族社会全体の誇りとなっています。 例として、楊藎誠（軍人）、戴秉国（外交官）、海容天天（芸術家・モデル）、ロン・モンロウ（モデル）、許晴（女優）、銀臨（歌手）などが挙げられます。（※許晴は祖母がトゥチャ族）

今後の課題

トゥチャ族は、独自の文化と伝統を将来にわたって継承していくための課題に直面しています。言語の維持、伝統文化の保護、経済発展など、様々な問題に取り組む必要があります。中国政府による支援と、トゥチャ族の人々自身の努力によって、その文化が守られ、発展していくことが期待されます。

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