トゥラ・ブカ

トゥラ・ブカ：ジョチ・ウルスの悲劇のハン

トゥラ・ブカ（? - 1291年）は、ジョチ・ウルスの第8代ハンとして、1287年から1291年までの短い期間在位しました。彼はバトゥの曾孫にあたり、モンケ・テムルとトデ・モンケの甥という血筋でした。その治世は、ジョチ・ウルスの内紛と権力闘争に翻弄されたものでした。

ハン位簒奪と独裁政治

1287年、トゥラ・ブカは弟のゴンチェク、モンケ・テムルの遺児であるアルグイ、トグリルチャと共謀し、クーデターを企てます。彼らは、ジョチ・ウルス右翼の重鎮であるノガイと、オルダ・ウルス左翼の統帥コニチによって擁立されていた叔父のトデ・モンケを廃位することに成功しました。トゥラ・ブカはジョチ・ウルスの中心地であるサライを掌握し、ハン位に就きました。しかし、その政治体制は、クーデターを共に行った四者による独裁的なものでした。

トクタとの対立

トゥラ・ブカは、自身のハン位を脅かす存在として、トクタ（モンケ・テムルの五男）を警戒していました。トクタはクリミア方面に所領を有しており、ジョチ・ウルス西部境域を鎮撫する有力な王族ノガイと結びつきを強めていました。トゥラ・ブカはトクタの殺害を企てますが、これが更なる悲劇を招きます。

破滅への道

ノガイは仮病を使い、トゥラ・ブカらを自らの陣営におびき寄せます。そこにはトクタが待ち伏せており、トゥラ・ブカは兄弟もろとも襲撃され、殺害されました。これにより、トゥラ・ブカはハン位を奪われ、短い治世は終焉を迎えたのです。

結末

トゥラ・ブカの生涯は、ジョチ・ウルスの権力闘争の激しさを物語っています。簒奪によってハン位を得たものの、その独裁的な政治とトクタ殺害未遂が、自らの破滅を招いたと言えるでしょう。彼の悲劇的な結末は、ジョチ・ウルスの不安定な政治状況を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

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