トゥラーン (戦車)

トゥラーンの概要

トゥラーン（ハンガリー語: Turán）は、第二次世界大戦中にハンガリーで生産され、戦場で使用された中戦車です。この戦車は、チェコのシュコダ社が設計したT-21中戦車を基盤に、ライセンス生産によって1938年から1944年にかけて合計400両以上が完成しました。トゥラーンの名は、中央アジアの伝説上の民族や国に由来し、ハンガリー人を含む多くのアジア系民族の祖先として位置づけられています。

開発の背景

ハンガリーは1938年にトルディ軽戦車を採用しましたが、第二次世界大戦の勃発により、より強力な機甲兵力の構築が必要であると認識しました。その結果、ハンガリーは中戦車の開発に取り組むことになります。当初、IV号戦車のライセンス生産を計画しましたが、この案は認可されず、代わりにシュコダ社のT-21を選択しました。T-21は、同社のLT-35軽戦車を基に開発されたもので、リベット接合の構造や特有のサスペンション機構を持っています。

1940年、シュコダのT-21を元にした「40Mトゥラーン中戦車（トゥラーン I）」が整備され、最初の生産が開始されました。この過程で、国産の部品を用いるなど大幅な改修が行われました。1941年に最初の試作車が完成、1942年には部隊への配備が始まりました。

戦訓と改良

しかし、トゥラーン Iの生産が進む中で、バルバロッサ作戦の戦訓を受け、当初の40mm砲ではソ連の強力な戦車に対抗できないことが明らかになりました。このため、より強力な砲の搭載が模索され、短砲身の75mm砲を装備した「41Mトゥラーン重戦車（トゥラーン II）」が制式採用されました。このモデルでは、砲塔の大型化や、防御力の向上を図るための装甲スカートが追加されるなどの改良が施されました。最終的には140両程度が生産されました。

さらに、対戦車能力を向上させるために、長砲身の75mm砲を搭載した「43Mトゥラーン重戦車（トゥラーン III）」も試作されましたが、これが生産されることはありませんでした。

トゥラーンのバリエーション

トゥラーンには多数のバリエーションが存在します。

40Mトゥラーン中戦車（トゥラーン I）

最初の量産型であり、280両程度が1941年から1944年に生産されました。

41Mトゥラーン重戦車（トゥラーン II）

短砲身75mm砲を搭載した火力強化型です。140両程度が生産されました。

43Mトゥラーン指揮戦車

トゥラーン IIを基に、無線機等を増設した指揮車型で、1943年に1両のみが製造されました。

43Mトゥラーン重戦車（トゥラーン III）

長砲身75mm砲を装備し、装甲も強化される予定でしたが、生産には至りませんでした。

ズリーニィ突撃砲

トゥラーンを基にした突撃砲で、主に大戦末期に実戦投入されました。

トゥラーン系列の戦車は、当時の戦局においてハンガリー軍の機甲戦力を象徴する存在であり、その開発と生産過程は、戦車技術が進化していく中での重要な一歩となりました。

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