トゥルー・グリット

トゥルー・グリット：復讐の旅路と、男たちの友情

2010年公開の『トゥルー・グリット』（原題：True Grit）は、コーエン兄弟が監督・製作・脚本を務めたアメリカ映画です。スティーブン・スピルバーグが製作総指揮に名を連ね、1969年公開のジョン・ウェイン主演作『勇気ある追跡』のリメイクとして注目を集めました。チャールズ・ポーティスによる原作小説を基に、新たな視点で描かれた本作は、多くの賞にノミネートされ、高い評価を獲得しています。

物語：少女の復讐と、追跡劇の行方

舞台は19世紀アメリカの西部開拓時代。14歳の少女マティ・ロスは、父の殺害と所持品の奪取という悲劇に見舞われます。犯人は、トム・チェイニーというならず者です。復讐を誓ったマティは、腕利きの保安官ルースター・コグバーンを雇います。コグバーンは、酒好きで荒っぽい性格ですが、少女の強い意志と報酬に惹かれ、チェイニーの追跡に乗り出します。

マティの復讐に加わるのは、チェイニーの追跡を続けるテキサス・レンジャーのラ・ビーフです。しかし、コグバーンとは性格が合わず、しばしば衝突します。彼らは、チェイニーが凶悪なアウトロー集団と合流していることを突き止め、危険な追跡劇に身を投じます。

追跡の過程では、コグバーンとラ・ビーフの過去や能力が明らかになり、二人の対立と協力が交互に描かれます。壮絶な銃撃戦や決闘が繰り広げられ、マティは自らの手でチェイニーに重傷を負わせるものの、捕らえられてしまいます。

コグバーンはマティを救出しようと奮闘しますが、幾多の困難を乗り越えながらも瀕死の重傷を負います。そして、ラ・ビーフの窮地を救う活躍も見せます。チェイニーを倒すも、マティはガラガラヘビに噛まれて命の危機に瀕し、コグバーンの献身的な介抱によって一命を取りとめます。

キャスト：個性豊かな登場人物たち

本作には、個性豊かなキャラクターたちが登場します。

ジェフ・ブリッジス演じるコグバーンは、老練で厳格ながらも、少女マティへの温かい感情を秘めた保安官です。
ヘイリー・スタインフェルド演じるマティ・ロスは、復讐心に燃える芯の強い少女として、物語の中心人物です。
マット・デイモン演じるラ・ビーフは、プライドが高く、自己中心的ながらも、正義感を持つレンジャーです。
ジョシュ・ブローリン演じるトム・チェイニーは、冷酷非情な殺し屋であり、物語の黒幕です。

その他、個性的なアウトローたちが物語を彩ります。

製作：原作への回帰と、キャスティングの苦労

コーエン兄弟は、原作小説に強く惹かれ、リメイクを決意したと語っています。1969年版とは異なり、少女マティの視点に重点を置いた脚本は、原作に忠実に作られています。

マティ役の選考は難航し、1万5000人以上の候補者の中から、当時13歳だったヘイリー・スタインフェルドが選ばれました。テキサス州やニューメキシコ州での撮影は、天候に恵まれない厳しい状況で行われました。

評価：高い評価と興行収入

『トゥルー・グリット』は、批評家から高い評価を獲得しました。Rotten Tomatoesでは96%という高い支持率を記録し、Metacriticでも高いスコアを獲得しています。ロジャー・イーバートやピーター・トラヴァースなど、著名な批評家からも絶賛され、アカデミー賞では作品賞を含む10部門にノミネートされました。

興行成績も好調で、コーエン兄弟監督作品の中で最大のヒット作となりました。北米での興行収入は、西部劇映画として『ダンス・ウィズ・ウルブズ』に次ぐ歴代2位を記録しました。

結語：忘れられない西部劇

『トゥルー・グリット』は、復讐、友情、正義といった普遍的なテーマを、見事な映像美と緊迫感あふれるストーリーで描き出した傑作西部劇です。少女マティの成長、そして彼女を取り巻く男たちの生き様は、観る者の心に深く刻まれることでしょう。 25年後のマティの物語は、この冒険の余韻を残し、コグバーンの死と、彼女自身の生き方への新たな決意を私たちに示してくれます。

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