トゥ・メニー・ピープル

トゥ・メニー・ピープル (Too Many People)

「トゥ・メニー・ピープル」は、ポール・マッカートニーが妻リンダとの共同名義、ポール&リンダ・マッカートニーとして1971年にリリースした楽曲です。彼のソロ名義としては2作目のアルバムとなる『ラム』のオープニングトラックとして収録され、アメリカではシングル「アンクル・アルバート〜ハルセイ提督」のB面曲としても発表されました。

この楽曲が音楽史において特に重要な位置を占めるのは、その歌詞に込められたメッセージ性にあります。長年ファンや評論家の間で憶測されていましたが、マッカートニー自身が後年、この曲が元ビートルズのバンドメイト、ジョン・レノンに向けられたものであることを認めています。2012年のアルバム再発盤『ラム アーカイヴ・コレクション』のライナーノーツで、ポールはこの曲を「まさに電波に乗ったジョンへのメッセージだった」と明かしています。彼は、当時のジョンが人々に対して「何をすべきか」「どう生きるべきか」を説く態度に対し、時に偽善的な印象を抱いていたと述べています。こうした複雑な思いが、「Too many people preaching practices（あまりに多くの人がやることを説く）」という印象的なフレーズとなって結実しました。ポールはこの部分が直接的にジョンを指しているとし、当時の二人の関係性、そして自身が「誰かから一方的に説教される必要はない」と感じていた率直な心境を表現したものであると振り返っています。さらに遡る1984年の『PLAYBOY』誌のインタビューでも、このフレーズはジョンとヨーコに対する「ちょっとした皮肉」であったことを語っており、他の楽曲で彼らについて直接的に言及したことはないと述べています。

楽曲自体の音楽的な完成度も高く評価されています。アメリカのローリング・ストーン誌は、この曲を「マッカートニーのポスト・ビートルズにおける第3の傑作」として高く評価しました。また、Statesman Journal紙は、「明るさと苦みが見事に融合し、慎重に構成された楽曲」と評し、「紛れもなくビートルズサウンドに通じる要素がある」と指摘。同紙は『ラム』収録曲の中でも特に優れたトラックの一つとして称賛しています。ポールの持ち味であるメロディメイキングと、ビートルズ時代を彷彿とさせるサウンドプロダクションが、批評家やリスナーに強い印象を与えました。

レコーディングセッションには、ポールとリンダに加え、セッションミュージシャンが起用されています。ギターパートでは、アコースティックギターとエレクトリックギターをヒュー・マクラッケンが担当しました。ドラムスやパーカッション、さらにカウベルやシェイカーといった打楽器は、後にウイングスでも活動を共にするデニー・シーウェルが担当しています。ポール自身は、リードボーカルとバッキングボーカルに加え、ベース、アコースティックギター、エレクトリックギターと、多岐にわたる楽器を演奏し、この楽曲のサウンドの中核を築き上げています。

この楽曲は、ビートルズ解散後のポールとジョンの間に生じた確執や緊張関係を背景にした、いわゆる「応酬」楽曲の一つとして語られることがあります。ジョン・レノンもまた、自身のアルバム『イマジン』に収録された「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?」で、ポールに対する痛烈な批判を展開しました。「トゥ・メニー・ピープル」は、こうした音楽を通じた元メンバー間の複雑なコミュニケーションの始まりとも位置づけられており、ビートルズ解散という歴史的な出来事の後の、彼らの人間的な側面を垣間見せる貴重な楽曲として、今なお多くの議論と関心を集めています。

主な参加ミュージシャン

ポール・マッカートニー: リード・ボーカル、バッキング・ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター
リンダ・マッカートニー: バッキング・ボーカル
ヒュー・マクラッケン: アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター
デニー・シーウェル: ドラムス、パーカッション、カウベル、シェイカー

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