トゥーラーン・シャー

トゥーラーン・シャー：アイユーブ朝最後のスルタン

トゥーラーン・シャー（生年不詳 - 1250年5月2日）は、アイユーブ朝の第8代スルターンであり、事実上最後のスルターンとして知られています。彼の短い治世は、王朝の終焉を象徴する出来事となりました。

生い立ちと即位

トゥーラーン・シャーは、第7代スルターンのサーリフを父に持ち、その前妻を母として生まれました。父の死後、後妻であったシャジャル・アッ＝ドゥッルが王朝の実権を握ります。

1249年、父サーリフはフランス王ルイ9世率いる第7回十字軍との戦いの最中に病死しました。シャジャルは軍の混乱を避けるため、夫の死を隠蔽し、あたかも生存しているかのように装って軍を指揮。見事ルイ9世を打ち破り、捕虜とするという功績を挙げました。しかし、この過程でシャジャルとその親衛隊であるマムルークが権力を掌握することになります。

短い治世と最期

十字軍の脅威が去ると、トゥーラーン・シャーは正式にスルタンとして即位しました。しかし、彼は実権を取り戻すべく、継母シャジャルを政治の中枢から遠ざけようとします。さらに、マムルーク軍に対して強圧的な態度を取り、彼らの不満を高めていきました。

こうした状況下で、1250年、シャジャルを中心とするマムルークによる反乱が発生。トゥーラーン・シャーは殺害され、カイロにおけるアイユーブ朝の本流は事実上滅亡しました。ただし、エジプト各地に残ったアイユーブ王族による地方政権は、シャジャルが創設したマムルーク朝のもとで命脈を保つことになります。

歴史的意義

トゥーラーン・シャーの治世は短く、その行動は結果としてアイユーブ朝の滅亡を早めることになりました。彼の死後、エジプトはマムルーク朝の支配下に入り、新たな時代を迎えることになります。彼がスルタンとして権力を掌握しようとした試みは、当時の政治情勢とマムルークの台頭という流れの中で、無残にも打ち砕かれたと言えるでしょう。

トゥーラーン・シャーは、アイユーブ朝の終焉を象徴する人物として、歴史に名を刻んでいます。

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