トガサワラ属

トガサワラ属（Pseudotsuga）

トガサワラ属は、マツ科に属する針葉樹の分類群の一つであり、学名は Pseudotsuga と表記されます。日本国内においては、トガサワラ（Pseudotsuga japonica）という種のみが分布しています。

特徴

トガサワラ属の樹木は、いずれも常緑性の針葉樹であり、高木に成長します。特に、北アメリカに分布するアメリカトガサワラ（ベイマツ Pseudotsuga menziesii）は、高さが100メートル、直径が5メートルに達することもあり、世界で最も高い樹木の一つとして知られています。

葉は細長い形状で扁平であり、葉の表面には主脈に沿って浅いくぼみが見られます。裏面には、主脈の両側に沿って白っぽい気孔帯が存在します。葉は茎に対して螺旋状につきますが、やや二列に並んで見えるのが特徴です。また、茎には葉枕が発達しません。

雌雄同株であり、球果（松ぼっくり）は成熟すると下向きになります。種子鱗片から苞鱗片が長く伸び出し、その先端が三つに分かれて尖っているのが特徴です。種子散布は、球果の鱗片が開くことによって行われます。球果の鱗片は、モミ属のようにバラバラに脱落することはありません。種子には翼がついています。

また、マツ科の植物の花粉には一般的に気嚢（空気袋）がありますが、トガサワラ属の花粉には気嚢がないという特徴があります。

分布

トガサワラ属は、北アメリカとアジア東部に分布しています。化石はヨーロッパでも発見されており、かつてはより広い範囲に分布していたと考えられています。

分類

トガサワラ属は、形態的にツガ属やトウヒ属の植物に似ていますが、これらの属とは、枝に葉枕がある点や、球果の苞鱗片が種子鱗片から突出しない点などで区別できます。また、モミ属とは、球果の鱗片が成熟時に脱落するかどうかという点で異なっています。

分類学的には、カラマツ属 Lalix やギンサン属 Cathaya とともにカラマツ亜科に分類されることもありますが、一般的にはモミ亜科に分類されています。

現在、世界では4種類のトガサワラ属の植物が確認されており、そのうち日本にはトガサワラのみが自生しています。しかし、日本からは他の種類のトガサワラ属の化石も発見されており、現在の限られた分布域から、トガサワラが遺存種であると考えられています。一方、北アメリカに分布するベイマツは、広大な分布域を持ち、その量も豊富であるため、戦前には建材として日本に大量に輸入されていました。

トガサワラ属の種

Pseudotsuga japonica トガサワラ - 日本固有種
Pseudotsuga macrocarpa - 北アメリカ西海岸に分布
Pseudotsuga menziesii ベイマツ（アメリカトガサワラ・ダグラスファー） - 北アメリカ西海岸に分布
var. grauca
Pseudotsuga sinensis シナトガサワラ - 中国に分布。複数の亜種を含む
var. brevifolia
var. grussenii
var. wilsoniana (Syn. Pseudotsuga wilsoniana) タイワントガサワラ - 台湾に分布

近縁属

[近縁属の情報は元のテキストに記載されていません]

参考文献

北村四郎・村田源 (1979) 『原色日本植物図鑑・木本編II』 保育社. ISBN 4-586-30050-7
清水建美 (1997) トガサワラ 『朝日百科 植物の世界 第11巻』 246 - 247, 朝日新聞社.

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